NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」でヒロイン的な役割を果たすことが予想されるのが、主人公・蔦屋重三郎(通称・蔦重)の幼なじみで松葉屋を代表する人気花魁・花の井(はなのい)です。
小芝風花が演じる花の井は伝説の花魁として史実に名を残す五代目瀬川(ごだいめ・せがわ)がモデルであることが判明していますので、その人物像などを簡単にまとめます。
【べらぼう】幼なじみの花魁・花の井(五代目瀬川)
▼心優しい花魁・朝顔(愛希れいか)に可愛がられて育った蔦重と花の井。
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— 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」1/5放送開始 (@berabou_nhk) January 5, 2025
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花の井(小芝風花)は、遊郭・吉原を代表する老舗女郎屋「松葉屋」を代表する人気の花魁(おいらん)です。
「松葉屋」は数々の名妓(めいぎ)を輩出し続けており、特に江戸中にその名を轟かせてきた「瀬川(せがわ)」の名跡は伝説的。
ドラマのスタート時、この「瀬川」の名跡は長らく途絶えている状態のようですが、やがて花の井がある理由により「五代目瀬川」を継ぐと、その名を江戸市中に轟かせていくことになります。
花の井は、主人公の蔦屋重三郎(横浜流星)とは幼なじみの間柄という設定です。
花の井は幼いころに親に売られて吉原で育っており、幼少期に両親と生き別れになった蔦重とはどこか重なるところがありそう。
※第1話では松葉屋の高級女郎だった朝顔(愛希れいか)に幼少期の花の井と蔦重が可愛がられているシーンがありました。
口喧嘩も多い二人ですが、互いに気心が知れた間柄であり良き相談相手でもあります。花の井と蔦重は互いに助け合いながら、共に育った吉原の再興に尽力する盟友関係になっていきそうです。
【べらぼう】蔦重と花の井に恋は生まれる?
今後気になるのが、花の井と蔦重との間に恋愛感情が生まれていくのかというところ。
後述するように花の井(後の五代目瀬川)は後に盲目の高利貸しで大富豪の鳥山検校(市原隼人)に1400両という破格の金額で身請けをされることになるのですが、鳥山検校は花の井の心の中に蔦重がいることを感じ取り、葛藤していくことになります。
また、蔦重に対して一方的に思いを寄せていく遊女・誰袖(たがそで)を福原遥が演じることが公表されており、花の井、蔦重、誰袖、鳥山検校らの想いが交錯していく展開が予想されます。
事前公表の情報などから、花の井を演じる小芝風花が「べらぼう」の(特に前半の)ヒロイン役ではないかと考えられます。
【史実モデル】伝説の花魁・五代目瀬川とは
花の井が継ぐことになる名跡「瀬川」は実在のもので、五代目瀬川は江戸に名を轟かせた伝説の花魁として知られる人物です。
この「瀬川」は吉原遊郭(新吉原)を代表する遊女屋だった「松葉屋」(松葉屋半右衛門)が受け継いでいた代表的な名跡で、通算で9人の「瀬川」が居たそうです。
特に、芸事や教養、美貌に突出していた四代目瀬川と、鳥山検校に落籍され江戸中の評判となった五代目瀬川は有名であり、「べらぼう」ではこの五代目瀬川をモデルとして花の井のキャラクターが創作されています。
※「検校(けんぎょう)」は平安、室町時代から置かれていた監督役職名。室町時代以降は盲人に与えられた最高の官名でもありました。元禄頃から幕府により検校に対し高利の金貸しが認められ、中には暴利を貪って多額の財をなした検校もいたそう。そうした検校は吉原遊郭で豪遊をして世間の話題になったそうです。
安永4年(1775年)、吉原遊廓を代表する花魁となっていた「松葉屋」の五代目瀬川は、盲目の高利貸しである鳥山検校から巨額により身請けされ、江戸中で大きな話題となったそうです。
鳥山検校は才覚があったようで高利貸しとして大成功し、莫大な財産を築いていました。その財産を手に吉原遊廓へと出入りするようになり、評判の花魁・五代目瀬川を見初めたのでしょう。
しかし鳥山検校と五代目瀬川との生活は長くは続きませんでした。身請けから3年後の安永7年(1778年)、鳥山検校は高利貸しとしての悪事が発覚すると処罰されて没落。これを受けて五代目瀬川は家を出て、新たな人生を模索したとされます。
鳥山検校との別離後、五代目瀬川が辿った人生にはいくつかの説があるようです。
ひとつは本所埋堀の大工・結城屋八五郎と再婚し、剃髪して尼となり八五郎を支えながら晩年まで暮らしたとするもの。そしてもうひとつは、御家人・青木健蔵と夫婦になり、最終的に根岸で亡くなったとするもの。諸説あるようですが、大富豪の鳥山検校と別離した後の五代目瀬川は慎ましい生活を送ったことが想像されます。
【史実モデル】江戸文芸のモチーフになった五代目瀬川と鳥山検校
五代目瀬川と大富豪・鳥山検校の関係が江戸中の話題になったことで、二人の人生が当時の文芸作品に大きな影響を与えています。
安永7年(1778年)に戯作者・田螺金魚(たにし・きんぎょ)によって書かれた洒落本「契情買虎之巻(けいせいかいとらのまき)」は、鳥山検校が五代目瀬川を身請けしたという題材をもとに創作された物語でした。
「契情買虎之巻」の内容は、吉原の遊女・瀬川が亡き夫の幸次郎によく似た客の五郷と恋仲になるものの、周囲の邪魔にあって結ばれず、ついに瀬川は男児を残して死んでしまうという悲恋の物語。当時の世相を反映していたともいえる遊女と客の悲劇的な姿を描いた同作は、一大ジャンルになった人情本の祖とされています。
この「契情買虎之巻」が人気になると、そこから黄表紙「吉原語晦日月」や「鳳凰染五三桐山」といった多くの文芸作品や劇などが派生しています。五代目瀬川の波乱万丈の人生は脚色され、エンターテインメントとして広く江戸時代の人々に愛されるものとなったのです。
大河ドラマ「べらぼう」では、史実として伝わる五代目瀬川と鳥山検校の顛末や、そこから派生した「契情買虎之巻」などの江戸の娯楽文化を参考にして、花の井の人生が創作されていきそうです。
市原隼人演じる盲目の高利貸し・鳥山検校はお金では花の井の心を買うことが出来ず、蔦重に嫉妬心を抱えていくことになりそうです。花の井が身請けの後にどのような人生を歩んでいくのか、今後の展開が楽しみです。