NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に登場する盲目の大富豪・鳥山検校(とりやま・けんぎょう)についてまとめます。
市原隼人が演じる鳥山検校という人物は、吉原有数の花魁だった五代目瀬川を巨額で身請けした実在の人物がモデルになっています。
【べらぼう】花の井(瀬川)を見受け 盲目の大富豪・鳥山検校
蔦屋重三郎(横浜流星)の幼なじみである花魁・花の井(小芝風花)は、幼い頃に親に売られ、重三郎とともに吉原で育っています。花の井は、口喧嘩をしながらも気が合う重三郎に何かしらの特別な想いを抱いているようです。
やがて老舗女郎屋・松葉屋が誇る伝説の花魁の名跡「瀬川(五代目)」の名を継ぎ、江戸中に名を轟かせることになる花の井ですが、その人生は波乱万丈のものとなっていきそうです。
安永4年(1775年)に盲目の高利貸し・鳥山検校(市原隼人)から1400両(現在のおよそ1億4000万円の価値)という巨額で身請け(落籍)された瀬川は、その話題性から江戸中の好奇の目を集めることになります。
鳥山検校は高利貸しとして大成功を納め、金の力ですべてを手に入れてきた男。しかし、妻となった瀬川の心だけは金では買えず、彼女の心の中に重三郎が存在することを感じ取っていきます。
そんな鳥山検校も、瀬川の身請けからしばらくするとある出来事により失脚。この影響で、瀬川の人生は思わぬ方向に進んでいきそうです。
★市原隼人(いちはら・はやと)…神奈川県川崎市出身の37歳の俳優。ドラマ「あいくるしい」「ROOKIES」「陽だまりの樹」「不機嫌な果実」や映画「リリイ・シュシュのすべて」「黄泉がえり」など数々の作品で人気俳優に。近年もドラマ「おいしい給食」シリーズ、「正直不動産」シリーズなどで存在感を見せ続けている。大河ドラマは「おんな城主 直虎」「鎌倉殿の13人」に続く出演。
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— 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」1/5放送開始 (@berabou_nhk) December 17, 2024
江戸の市井
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【史実モデル】五代目瀬川を見受けした鳥山検校
この鳥山検校という人物は江戸時代に実在した大富豪で、吉原有数の花魁だった松葉屋の五代目瀬川を巨額で身請けしたことで知られます。
※「検校(けんぎょう)」は平安、室町時代から置かれていた監督役職名。室町時代以降は盲人に与えられた最高の官名でもありました。元禄頃から幕府により検校に対し高利の金貸しが認められ、中には暴利を貪って多額の財をなした検校もいたそう。そうした検校は吉原遊郭で豪遊をして世間の話題になったそうです。
視覚障害を持ちながらも幕府公認の高利貸し事業で大成功し、莫大な財産を築いていた鳥山検校。
有り余る富を手に吉原遊廓に出入りしていたのでしょう。鳥山検校は、安永4年(1775年)に当時の吉原きっての人気花魁だった五代目瀬川を巨額により落籍(身請け)しています。
あまりの大金による五代目瀬川の身請けはちょっとした「事件」のような扱いを受けたようで、江戸中の話題になったそうです。
しかし、鳥山検校と五代目瀬川との生活は長く続きませんでした。落籍から3年後の安永7年(1778年)には、高利貸しとして暴利を貪ってきた鳥山検校の悪事が発覚。鳥山検校は幕府から財産を没収されて失脚し、五代目瀬川は家を出てしまったそうです。
鳥山検校との別離後、五代目瀬川が辿った人生にはいくつかの説があるようです。
ひとつは本所埋堀の大工・結城屋八五郎と再婚し、剃髪して尼となり八五郎を支えながら晩年まで暮らしたとするもの。そしてもうひとつは、御家人・青木健蔵と夫婦になり、最終的に根岸で亡くなったとするもの。諸説あるようですが、大富豪の鳥山検校と別離した後の五代目瀬川は慎ましい生活を送ったことが想像されます。
文学作品のモチーフになった鳥山検校と五代目瀬川
五代目瀬川と大富豪・鳥山検校の関係が江戸中の話題になったことで、二人の人生が当時の文芸作品に大きな影響を与えています。
安永7年(1778年)に戯作者・田螺金魚(たにし・きんぎょ)によって書かれた洒落本「契情買虎之巻(けいせいかいとらのまき)」は、鳥山検校が五代目瀬川を身請けしたという題材をもとに創作された物語でした。
「契情買虎之巻」の内容は、吉原の遊女・瀬川が亡き夫の幸次郎によく似た客の五郷と恋仲になるものの、周囲の邪魔にあって結ばれず、ついに瀬川は男児を残して死んでしまうという悲恋の物語。当時の世相を反映していたともいえる遊女と客の悲劇的な姿を描いた同作は、一大ジャンルになった人情本の祖とされています。
この「契情買虎之巻」が人気になると、そこから黄表紙「吉原語晦日月」や「鳳凰染五三桐山」といった多くの文芸作品や劇などが派生しています。五代目瀬川の波乱万丈の人生は脚色され、エンターテインメントとして広く江戸時代の人々に愛されるものとなったのです。