NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」最終週(第26週・9月26日〜)では、花山伊佐次(唐沢寿明)が最後の大仕事となる「あなたの暮し・戦争特集号」の制作に奮闘する様子が描かれます。
実際に「暮しの手帖」では昭和43年に「戦争中の暮しの記録」という特集号(後に単行本化)を刊行しておりますので、そのあたりを含め、まとめておきます。
花山最後の大仕事「戦争特集号」
最終週では、昭和49年に花山が取材先の広島で倒れ、同年冬に亡くなるまでの様子が描かれます。
花山は自宅療養を余儀なくされてもなお仕事に意欲を見せ、読者から投稿された「戦時中の暮らしの記録」をまとめる作業に没頭します。
花山は、かつて自身が「内務省宣伝部」に所属し戦意高揚の一翼を担った過去を長年悔いており、戦争を知らない次世代のために、戦時中の記録を残したいと考えていたのです。
花山が文字通り命を削って創りあげた「あなたの暮し・戦争特集号」は、創刊以来最高の100万部越えの売り上げを記録します。読者からの反響も大きく、この大仕事は花山にとっても満足のいくものとなります。
「暮しの手帖」も戦時中の暮らしをまとめた
「あなたの暮し」のモデル雑誌「暮しの手帖」も、終戦から23年後の昭和43年に「特集 戦争中の暮しの記録」(暮しの手帖・96号)を刊行しています。
この特集号でまとめられた「戦争の記録」は、実に「暮しの手帖」らしいものでした。
歴史上の事件や著名人を扱うのではなく、名もない市民、国民が戦時中どのように暮し、何を食べ、何を着て、どんな思いでその時代を生きたのか…。読者から寄せられた手記(実に1700篇を超えた)から139篇が選ばれ、「暮しの手帖」一冊丸々、戦争特集のみで構成された特別版として発売されました。
この特集号は大いに売れ、翌年には保存版の「単行本」となり、その後も根強く売れ続けているとのこと。
史実では花森安治が亡くなったのは特集号刊行から10年後の昭和53年であり、時系列的に花森の「最後の大仕事」というわけではありませんが、市井の人々の暮らしを大切にする「暮しの手帖」が後世に残した、入魂の一冊といえるでしょう。
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