NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」第20週(2016年8月15日~)からストーリーに登場し、後に雑誌「あなたの暮し」の名物特集企画に育っていく「商品試験」。
この「商品試験」は、雑誌「暮しの手帖」の名物企画だった「商品テスト」がモデルになっています。この記事では、本家「商品テスト」がどういった企画だったのかをまとめます。
名物企画「商品テスト」とは
後世に語られる名物企画「商品テスト」が始まったのは昭和29年、「暮しの手帖」第26号でのことでした。
「商品テスト」は初回のソックス(靴下)に始まり、マッチ、鉛筆、アイロン、しょうゆ、電球、トースター、洗濯機、石油ストーブなどなど、生活に直結した製品の使い勝手、耐久性、デザイン、品質等を各製品ごとに徹底的に調査、比較し、誌面上でその結果を報告するというもの。
日夜繰り返される「研究」
この企画に対する編集部のこだわり、手間のかけようは相当なものでした。
フライパンや魚焼きアミのテストでは一ヶ月、朝から晩までキャベツや菜っ葉を炒め続け魚を焼き続け、配線器具のテストではプラグを5000回にわたり抜き差しを繰り返し、男子靴のテストでは35人の男性モニターに細かくうるさい条件下で一年間一日も欠かさず履き通してもらうなど、「商品テスト」は大変な手間と時間と費用をかけた入魂の企画だったのです。
暮しの手帖編集部はこれら調査を行うための実験室と化し(花森は「暮しの手帖研究室」と呼んでいた)、時には石油ストーブの実験のためにわざとストーブを倒して炎が上がるなど(花森の指図)、かなり無茶な調査も行われていました。
メーカー、消費者に大きな影響力 中傷も
このように多大な手間と時間をかけて炙りだされた「商品テスト」の調査結果は、次第に消費者やメーカーに対し大きな影響力を持つようになります。
「商品テスト」で高く評価された製品は売上を伸ばし、批判されると売れ行きが鈍るという現象が見られるようになってくると、メーカー側から商売の邪魔をするなといったクレームや批難、罵倒、中傷が寄せられたり、逆に金銭を払うので自社商品を好意的に扱って欲しいといったオファーも届くようになります。
「暮しの手帖」の批評性 製品の質向上にも貢献?
「とと姉ちゃん」でも同様に描かれていますが、「暮しの手帖」は一切広告を掲載しない雑誌として知られます。
創刊当初からのこだわり、決意でもあった広告を載せないという方針が、「商品テスト」の信頼性、中立性をより担保し、この企画が読者から信頼を得る一因となっていきました。
また、メーカーと利害関係を持たず媚びずに製品を批評していったことで、結果的に過渡期にあった国産製品の質の向上に寄与したという一面もあったようです。