NHK連続テレビ小説「あんぱん」2025年6月25日(水)放送の第63回では、敗戦後の高知の焼け野原でのぶと嵩が4年ぶりに再会する様子が描かれました。
戦時中の自らの教育に対し深い後悔の念を抱いているのぶは、嵩の強く前向きな言葉を受けてもう一度前を向くことになります。
この記事では、嵩が再会したのぶに語った会話内容などをまとめます。
嵩がのぶに語った言葉
夫の若松次郎(中島歩)を肺病で失い、戦時中に自らが行った軍国教育が大きな間違いだったことに気づくなど、大きな失望の中にいたのぶ(今田美桜)。
釜次(吉田鋼太郎)からのぶの近況を聞いた戦争帰りの嵩(北村匠海)は、高知市内の焼け野原にのぶを探し当てると、のぶと4年ぶりの会話を交わしています。
子どもたちから自由な心を奪い、戦争に加担してしまったことを悔いて教職を辞していたのぶは、「ウチ…生きちょってええがやろうか…」と嵩に今の心境を吐露しています。
ここから始まったのぶと嵩の会話は、これからの「戦後」を生きる二人にとって大きな支えになるとともに、後の「アンパンマン」誕生の大きな伏線になっていきそうです。
以下、二人の会話を書き出してメモしておきます。
嵩「のぶちゃん、死んでいい命なんてひとつもない。」
のぶ「嵩…はあ〜。うちは、どうすればよかったろうか」
嵩「どうすればよかったのか…僕もそればかり考えてたけどわからない。この先もずっとそれを自分に問いかけることしか出来ないんじゃないかな。新しい世の中になっても問い続けるしかないよ。」
嵩「正しい戦争なんかあるわけがないんだ、そんなのまやかしだよ。その〝まやかしの正義〟で敵も味方も仲間も大勢死んだ。千尋も…。」
嵩「最期にあいつ(千尋)が言った言葉がずっと耳に残ってる。この戦争さえなかったらわしは…愛する人のために生きたい…。」
のぶ「千尋くん…(涙を見せる)」
嵩「だから正義なんか信じちゃいけないんだ。そんなもの簡単にひっくり返るんだから。でももし…逆転しない正義があるとしたら…すべての人を喜ばせる正義、僕はそれを見つけたい。千尋のために、そうすることしか僕には出来ないと思って…。何年かかっても何十年かかってもみんなを喜ばせたいんだ。そう思ったら…うん、生きる希望が湧いた。絶望なんかしてられないって。」
嵩「だから生きるんだ。千尋の分もみんなの分も。のぶちゃんも生きてくれ。次郎さんの分も、のぶちゃんが大好きな子どもたちのためにも…。」
嵩の言葉に含まれたメッセージ
嵩がのぶに語った言葉の中には3つの重要な点が含まれているように思います。以下、簡単に要点をまとめます。
①千尋の愛の決意をのぶに伝える嵩
「この戦争さえなかったらわしは…愛する人のために生きたい…。」
嵩は亡き千尋に代わり、千尋が語った愛の決意をのぶに伝えています。
千尋は小倉で嵩と最後に会った際に、のぶのことをずっと好きだったことを明かすとともに、「わしは生きて帰れたらもう誰にも遠慮はせん。今度こそのぶさんをつかまえる」と嵩に宣言していました。
「この戦争さえなかったらわしは…愛する人のために生きたい…。」
嵩の口からという間接的な形ではありましたが、あの日千尋が語った想いはのぶへと届けられています。のぶが千尋の想いに気がついていたのかどうかは、視聴者の想像に任せるという形でしょうか。
※第6週・第33回で、メイコだけは早々に千尋がのぶに好意を寄せていたことに気がついています。千尋の想いを知ったメイコは「誰にも言わんき、心配せんといてください」と千尋に約束しています。恐らくこの約束は、未来永劫守られていくと思われます。
②「逆転しない正義」を探し続ける決意 アンパンマン誕生の伏線に
戦争が終わり日本国内の価値観が180度変わってしまったため、もはや何を信じていいのかわからなくなってしまっているのぶ。
そんなのぶに対し嵩は「正義なんか信じちゃいけない」としつつも、「でももし…逆転しない正義があるとしたら…すべての人を喜ばせる正義、僕はそれを見つけたい」と語っています。
嵩は、この「逆転しない正義」という概念の正解を見つけるまでに長い長い時間を要することになります。
ついにその答えを見つけた時。嵩は「困っている人に食べ物を届ける、立場や国が変わっても決して逆転しない」究極の正義のヒーロー・アンパンマンと出会うことになります。
③「生きるんだ」 たっすいがー嵩の強いメッセージ
「ウチ…生きちょってええがやろうか…」と発言するまでに追い込まれてしまっていたのぶに対し、嵩はどんなことがあっても「生きるんだ」と伝えています。
「何年かかっても何十年かかってもみんなを喜ばせたいんだ。そう思ったら…うん、生きる希望が湧いた。絶望なんかしてられないって。」
「だから生きるんだ。千尋の分もみんなの分も。のぶちゃんも生きてくれ。次郎さんの分も、のぶちゃんが大好きな子どもたちのためにも…。」
アンパンマンのマーチの歌詞に「なんのためにうまれて なにをしていきるのか」「そうだ うれしいんだ いきるよろこび」とあるように、嵩は悲しい死と直面したからこそ本当の「生きる意味」を確信したようです。
戦前は「ハチキンのぶ」に引っ張られる形で成長していった「たっすいがー(弱々しい、頼りない)」の嵩ですが、戦争の時代を経て、今度は嵩がのぶの生きる指針、喜びのような大きな存在になっていくのかも知れません。

