NHK連続テレビ小説「あんぱん」第6週では、東京高等芸術学校に通う嵩が図案コンクールに入選し、50円の賞金を獲得する様子が描かれます。
物語の時代設定である1937年(昭和12年)当時、この50円という賞金がどれくらいの価値を持つのか、当時の物価などから現代に換算した貨幣価値などを考えてみます。
嵩、コンクールで賞金50円を獲得
1937年(昭和12年)、東京高等芸術学校図案科に通う嵩(北村匠海)は、図案コンクールの佳作に入選し、賞金50円を獲得します。
嵩はこの2年前(1935年/昭和10年)の中学5年生の時に、高知新報社の新人漫画大賞で入賞に選ばれて10円の賞金を獲得しており、これに続く栄誉ということになります。
嵩はさっそく銀座のカフェの電話を借りて高知の柳井家に電話をし、想い人ののぶ(今田美桜)にこれを伝えようとしますが…。

賞金50円は勤め人の月給額に相当 現在の価値で20万円超?

「物価の文化史事典」(監修・森永卓郎)によれば、1937年当時の公立小学校教員(東京)の初任給は45円〜55円ほど。
つまり、嵩がコンクール佳作入選で得た賞金「50円」は、当時の公立小学校教員の初任給(45円〜55円)とほぼ同額程度ということになります。
現在の公立小学校教員の初任給が20万円ちょっとであることを考えると、嵩がもらった漫画の賞金50円は現在の給与水準で考えると20万円前後の価値といったところでしょうか。
以下のように、当時の50円が手に職を持つ石工や大工の月給に匹敵する額であることなどを考えると、なかなかの賞金額ですよね。
【参考①】1937年当時、東京で働いていた石工(日雇い)の日給が3円9銭(25日働いて約77円)、大工の日雇い手間代が2円20銭(25日働いて約55円)。この当時の国立大学の一年間の授業料がおおよそ120円。
【参考②】朝ドラ「とと姉ちゃん」では、この前年の1936年(昭和11年)にヒロインの常子(高畑充希)が働き口を探すために求人広告とにらめっこをしています。常子が見ていた求人広告の給与も、当時の物価感覚を知るために有用かと思いますので、転載しておきます。
・日動生命保険株式会社木場出張所 女性助手(事務)採用 月二十八円
・岩本商事 女性事務員募集 月三十円
・白田屋 呉服販売 月三十二円
・大塚商事 電話交換手 月三十四円
・富田自動車 女子事務員募集 月?円
・鳥巣商事 タイピスト 月四十円

この2年前に嵩は10円の賞金をもらって大喜びをしていますが、ほとんど物価が変わらない2年後にその5倍にあたる50円の賞金を獲得したわけですから、嵩の喜びはさらに大きなものとなるでしょう。
この当時、東京都内の喫茶店のコーヒー1杯が10銭、三越・日本橋本店内のハイカラな食堂の定食類が1食80銭くらい、新宿中村屋のカレーが1食1円前後。もし嵩がクラスメイトを引き連れて銀座で豪遊したとしても、50円あればみんなに豪快に奢ることが出来そうです。
2年前に朝田三姉妹にかき氷を奢ったようにまたしても嵩は誰かに奢らされるのか、それとも自己投資に使うのか、あるいはのぶに何かしらのプレゼントをあげるのか…。東京・大森のボロアパートで貧乏暮らしをしている嵩ですが、大金である50円をどのように使うのか気になるところですね。
【参考】2年前に嵩が賞金10円を獲得した際には、それを知った草吉(阿部サダヲ)が嵩を海岸に呼び出し、朝田三姉妹にかき氷とラムネを奢らせています。その後、嵩は残った賞金の中から3円を千尋に小遣いとして渡し、「兄の威厳」を見せています(第14回)。