NHK連続テレビ小説「ばけばけ」の主人公・松野トキの名前の由来は、小泉八雲が生前に妻のセツに語った言葉「マツ・ノ・トキ・アリマシタ」であると曾孫の小泉凡氏が語っています。
この記事では、「マツ・ノ・トキ・アリマシタ」の意味などをまとめます。
松野トキ 出生名は雨清水トキ（丑三つ時）
遠戚である雨清水家と松野家の取り決めにより、生まれてすぐに雨清水家から子供がいなかった松野家に養子に出された松野トキ（髙石あかり）。
この設定はトキのモデルである小泉セツが、生後すぐに生家の小泉家から遠戚の稲垣家に養子に出された史実がモチーフになっています。
松野トキの出生名は「雨清水トキ（うしみず・とき）」であり、これは怪談好きのトキのイメージと「丑三つ時（うしみつどき）」というワードを掛け合わせたダジャレネームとも考えられます。
「小泉」と「雨清水」は語感も近いため史実を参考にした名前とわかりますが、「稲垣」と「松野」は語感も遠く、「松野」という名前はどこから出てきたの？と疑問に思う方もいるかも知れません。
松野トキ 名前の由来はヘルンさん言葉「マツ・ノ・トキ・アリマシタ」
▼ヘブンとトキのモデルである小泉八雲とセツ。その人生を知るには、曾孫である小泉凡氏が語る「セツと八雲」がオススメ。身内ならではの細かいエピソードも多く、ドラマをより楽しむのにうってつけ。
ポチップ
小泉八雲、セツ夫妻（レフカダ・ヘブン、松野トキのモデル）の曾孫にあたる民俗学者の小泉凡氏は、曽祖父母を語る著書「セツと八雲」（朝日新書）の中で、「ばけばけ」ヒロイン・松野トキの命名由来について語っています。
それによると、松野トキの名前は小泉八雲が晩年にセツに語ったというヘルンさん言葉「スタシオン 二 タクサン マツ ノ トキ アリマシタ ナイ」が由来とのこと。
※「ヘルンさん言葉」とは？
日本語が決して上手くなかった八雲（愛称・ヘルンさん）は、英語が不自由だった妻のセツと会話するために独自の日本語「ヘルンさん言葉」を開発しています。「ヘルンさん言葉」は、語順は英語のままで、助詞（てにをは）を省き、動詞や形容詞などのややこしい活用形も省略した簡易的なカタコト日本語のこと。「ばけばけ」でヘブンが話しているカタコトの日本語も、ヘルンさん言葉がモチーフになっています。
「スタシオン 二 タクサン マツ ノ トキ アリマシタ ナイ」は、現代日本語に訳すと「駅（Station）で多くの待ち時間（時間の余裕）がなかった」といったところ。
八雲が亡くなる直前の最後の夏、一家は静岡・焼津で時を過ごしています。行きに利用した新橋駅で、八雲は可愛い息子にアイスクリームを買ってあげようとしたけれど、汽車の出発まで時間がなくてアイスクリームを買ってあげられなかった…。
そんな何気ない出来事を妻のセツに伝えたのが、ヘルンさん言葉である「スタシオン 二 タクサン マツ ノ トキ アリマシタ ナイ」でした。セツはこのレベルのカタコト言葉をスラスラと理解し、自身もヘルンさん言葉で八雲に返答をしていたようですね。
日常の一コマであるこの言葉をヒロインの名前に採用したこと自体には、深い意味はないのかも知れません。
しかし、「松野トキ」という名前は「時を待つ」というイメージも含んでおり、幼少期から忍耐強く苦境を生き抜いてきたトキにピッタリの名前でしょう。出生名の「雨清水トキ（丑三つ時）」とともに、「松野トキ」もまた、ヒロインの個性や人柄を言い表した名前と言えるかも知れません。
