ドラマ「Believe〜君にかける橋」第1話のラストシーンで登場した「碓氷峠の橋」。狩山夫婦にとって重要な意味を持つと思われるこの橋の登場経緯と、物語上でこの橋が持つ意味などを考察します。
※記事前半の2章は第1話の【あらすじ】となっていますので、読み飛ばしても大丈夫です。
【あらすじ】冷え切っていた夫婦関係 玲子が離婚を決断
大手ゼネコン「帝和建設」の土木設計部部長・狩山陸(木村拓哉)は、龍神大橋の崩落事故の責任を被せられ、国立刑務所で服役中の身です。
聖修大学病院で看護師長を務める妻・狩山玲子(天海祐希)との夫婦関係は逮捕前から冷え切っており、玲子は刑務所での面会の際に自身が末期がんであることを陸に告白するとともに、「犯罪者の妻のまま死にたくない」として陸に対し離婚届を突きつけています。
陸は極度の建設物オタクであり、仕事大好き人間。仕事に没頭しすぎるあまり玲子が末期がんを患っていることにすら気付かない陸に失望し、玲子は離婚を決断したのでした。
なお、玲子が陸に突きつけた離婚届(両者の署名あり)の日付は「平成」となっており、随分前に書いたものが引き出しの奥にしまわれていたようです。
【あらすじ】陸から玲子への手紙「碓氷峠の橋を覚えてるか?」
帝和建設の社長・磯田典孝(小日向文世)から無実の罪をかぶせられる形で刑務所に入った陸。少しナルシストな面がある陸は、自分が罪をかぶることで会社も部下も助かる、という状況に酔っていた部分もあったようです。
しかし、玲子が余命幾ばくもない末期がんだと知ったこと、それに玲子から会社の隠蔽工作に加担したと責められたこともあり、真実を明かすために戦うこと(再審請求)を決意したようです。
陸は「今生の別れ」だと言って面会室から去った玲子に対し、獄中から以下のような手紙を送っています。
玲子、碓氷峠の橋を覚えてるか?お前は高い所が苦手だから渡りたくないって喧嘩になったよな。今度は俺が一緒に渡る。もう嘘はつかない。
陸が言及した「碓氷峠の橋」とは、群馬県安中市松井田町にある通称「めがね橋」こと碓氷第三橋梁のこと。国内有数の交通の難所である碓氷峠(群馬・横川〜長野・軽井沢)を超える旧信越本線の鉄道橋として、1892年(明治25年)に完成した歴史的土木建造物です。
現在はその役割を終えていますが、美しい煉瓦造りの4連アーチは今も人々の心を魅了し、国重要文化財として大切に守られています。
【手紙内容の考察】「今度は俺が一緒に渡る」「もう嘘はつかない」
以下、陸が玲子に書いた手紙の意味について考察してみます。
お前は高い所が苦手だから渡りたくないって喧嘩になったよな。今度は俺が一緒に渡る。もう嘘はつかない。
この文章から推測されることは、
・過去に二人で「碓氷峠の橋」に行ったことがある。
・陸が高所恐怖症の玲子に無理やり橋を渡るように言って大喧嘩になった?
・または、陸が橋の観察に熱中するあまり、高所恐怖症の玲子を放置していた。
と言ったところでしょう。
また、手紙を読んだ玲子がすぐに陸の部屋に入り、壁から外されて棚に伏せられていた「碓氷峠の橋」の写真を手に取るシーンがありましたので、玲子自身もこの橋のことを覚えているようです。
・玲子は「碓氷峠の橋」のことを覚えている。
・陸の部屋の壁には名建設物の写真が多数飾られているが、何らかの理由で「碓氷峠の橋」の写真は外されている。
・手紙を読んだ玲子は「もう嘘はつかない…?」と首を傾げ、考え込んでいる。→玲子は嘘をつかれていたことを知らない?
・玲子は陸の手紙を一応真面目に読んでおり、完全に愛想をつかしているわけではない?
以上のことから、この「碓氷峠の橋」での出来事が夫婦間のわだかまりの発端になっている可能性があること、特に陸側がこの時の行動を悔やんでいる(もう一度やり直したい)らしいことが推測されます。
以下、完全なる推測ですがこの手紙が持つ意味を考察してみます。
予想①「碓氷峠の橋」が最初の離婚騒動の原因?
玲子が面会室に持参した離婚届の日付は「平成」であり、二人が過去にも離婚危機に陥っていたことが明かされています。平成時代に二人で行った「碓氷峠の橋」での喧嘩が、最初の離婚騒動の原因になった可能性が考えられます。※現在陸は50歳、玲子は53歳。
陸は自室の壁の「土木建設物写真コレクション」から「碓氷峠の橋」の写真を除外していますので、夫婦間において「碓氷峠の橋」はアンタッチャブルな思い出なのかも知れません。
橋の観察に熱中するあまり、陸は高所恐怖症で震えている玲子を置き去りにしてしまい、それが原因で夫婦喧嘩になった…といった可能性が考えられます。
予想②玲子の高所恐怖症には理由がある?
玲子が高い所が苦手というのは、単なる生まれつきの性質の可能性もありますが、過去の辛いトラウマが関係している可能性も考えられそうです。
玲子は過去に何らかの高所の事故によって愛する人を失っていたものの、陸はそんな玲子の気持ちを無視して土木マニアとしての好奇心(妻に名橋を渡らせたい、それを写真に収めたい)が先走ってしまった…とか?
予想③陸と玲子には子供がいた?
第1話では、磯田社長が崩落事故の隠蔽を要求するにあたり、陸に対し「ご家族は?」「お子さんは?」と質問する場面が描かれています。
磯田社長「狩山くん。ご家族は?」
狩山陸「妻が。」
磯田社長「お子さんは?」
狩山陸「…(目を泳がせて)おりません。」
「お子さん」は?と聞かれた陸は明らかに動揺した表情で目を泳がせた後、「…おりません。」と意味を含む言い方で返答をしています。このシーンは後々への伏線である可能性があります。
狩山夫妻の関係が冷え切っていた理由、陸が建設の仕事に異常に執着している理由、「今度は俺が一緒に渡る」「もう嘘はつかない」という陸の意味深な手紙の意味…。もし狩山夫妻が過去に子供を失っているのであれば、これらの事柄が点と線になって繋がっていく可能性があります。