明治末期から大正、昭和初期にかけて、大阪が東京をも凌ぐ繁栄を見せていた時代があったのをご存知でしょうか。
▲劇中、悠太郎が勤務する「三代目大阪市庁舎」は大正10年(1921年)竣工。ドラマでは美しいCGでよみがえっている。
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ちょうど連続テレビ小説「ごちそうさん」で描かれる大阪が、まさにこの時代。皮肉なことに東京方面の「関東大震災」によって移住、移転してきた人々や企業の影響もあり、大阪は「大大阪時代(だいおおさかじだい)」と呼ばれる華やかな時代のピークを迎えます。
大阪が最も華やかだった「大大阪時代」
大正14年(1925年)、つまり震災から二年後には大阪の人口は211万人に達し、東京市を上回って日本一、世界でも6番目の人口を持つ大都市になります。
ここまで「ごちそうさん」大阪編では旧家・西門家の生活を中心に、昔ながらの大阪・船場、天満あたりの日常風景が描かれてきました。天満市場の活気や、天神祭の提灯が浮き彫りにする艶やかな日本の町家の風景など、古い街並みや生活の描写もドラマの楽しみの一つでした。
しかし、関東大震災の発生とともにドラマの雰囲気も一変しそうです。被災地への物資供給の拠点となる大阪には、東京から焼け出され、命からがら逃げてきた移住者が多数やってきます。東京の被災状況が心配なめ以子にとっては、「イケズ」どころの話ではなくなりそうです。
現在も残る『モダンな大阪」はこの頃のもの
そうした東京方面の混乱により「臨時首都」のような役割を担うことになる大阪。加速する近代化により、これから迎える「大大阪時代」はこれまで描かれた「和」な大阪とは少し趣が異なってくるでしょう。
大正末期から昭和初期まで、街では「モボ」(モダンボーイ)「モガ」(モダンガール)と呼ばれる洋装の人たちが歩き、地下鉄御堂筋線の建設(悠太郎が関わるらしい)、モダン建築による街並みの近代化、大阪城天守閣の再建など、現在の大阪という街の骨格ともなる近代的都市建設が進められます。
文化や芸術においてもこの頃の大阪は絶頂期と言ってもよいでしょう。関東大震災から逃れてきた移住者により、江戸前の握りずしが本格的に普及するなど、新しい文化の風も流入しました。
▲大阪市中央公会堂(大正7年築)。赤レンガが美しい。
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▲大阪府立中之島図書館(明治34年築)は大阪を代表する近代建築。ネオ・バロック様式。
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参考:「大大阪時代」前後に建設され、現存する建築物を挙げておきます。明治末期~昭和初期のモダンな息吹を感じるこれらの建造物は、大阪観光の際にぜひ見ておきたいおススメスポットです。
・日本銀行大阪支店(明治36年建設。辰野金吾によるネオ・ルネッサンス様式)
・大阪府立中之島図書館(ギリシャ神殿を思わせる明治34年の建築)
・中央公会堂(大正7年完成、赤レンガが美しいネオ・ルネッサンス様式)
・地下鉄御堂筋線(心斎橋駅、梅田駅などのホーム周辺に、当時の面影が残っています)
・大阪城復興天守(大阪の象徴は、実はこの時代の再建)