TBS日曜劇場「危険なビーナス」で、ミステリーの鍵として登場する絵画(抽象画)「寛恕の網(かんじょのあみ)」についてまとめます。
「寛恕の網」の登場により、物語は思わぬ方向へと急加速していきます。
静物画家の父・一清の遺作 不思議な抽象画
「寛恕の網」は、主人公・手島伯朗(妻夫木聡)の亡き父・手島一清(R-指定)の遺作となった未完成の抽象画です。※「危険なビーナス」は東野圭吾によるミステリー小説が原作。「寛恕の網」は実在しないフィクションの絵画となります。
売れない画家だった手島一清は、伯朗が2歳の時に脳腫瘍を患うとその後は闘病生活を続け、伯朗が5歳の時に亡くなっています。
もともと写実的な絵(静物画)を描いていた一清でしたが、脳腫瘍発症から2年後に突然画風を変え、唯一と言える抽象画の作品(未完成)を残しています。
伯朗のかすかな記憶によれば、その抽象画は図形のような模様のような、見ていると目眩を覚えるような不思議な作品。父が遺した多数の静物画には心動かされなかった伯朗ですが、この未完成の抽象画だけはなぜか飛び抜けて印象的な作品だったそうです。
一清は当時、この抽象画について「自分でもわからないものを描いている」「神様に描かされているのかもしれない」と語っており、何か不思議な力が宿っているのかも知れません。残念ながらこの遺作は、その後に行方不明となっているようです。
消えた「寛恕の網」
伯朗も長年気に留めていなかった父の遺作ですが、矢神家の財産問題に首を突っ込んでいく中で、思わぬ形で重要な意味を持ち始めます。
原作によれば、矢神家の書庫に眠っていた亡き母・禎子(斉藤由貴)の荷物をまとめたダンボールを手にした伯朗は、その中に一清の全作品を写し、情報を記録したアルバムを発見します。
ところが、アルバムの最後のページにあるはずの「未完成の抽象画」の記録写真だけがキレイに剥がされ、何者かが持ち去ったらしい形跡が見られたのです。最後のページには、抽象画のタイトルと思われる「題 寛恕の網」という文字だけが残されていました。
※「寛恕(かんじょ)」とは、「寛大な心で許すこと」といった意味。
父母の死、矢神家の謎…ミステリーの鍵を握る絵
この「寛恕の網」の登場により、物語・ミステリーは一気に急加速していきます。
脳腫瘍に苦しんだ父・一清の治療の過程、脳科学・サヴァン症候群の分野の研究に血眼になっていた矢神家の人々、そして突然事故死をしてしまった母・禎子の衝撃の死因…。
まったく無関係だと思われていたさまざまな過去の事柄ですが、一清がなぜ突然「寛恕の網」を描いたのか、その理由が解き明かされると、驚くような繋がりを見せていきます。
▷ミステリーのヒント(少しだけネタバレ…)
少しだけミステリーのヒントを提示しておくと、康治による脳腫瘍の治療(実験?)を受ける中で一清は、脳の状態にある「特殊な変化」を引き起こしています。
これにより「神の啓示」のようなものをビビッと受けた晩年の一清は、例の「寛恕の網」の製作に着手。一清の手で描かれた「図形のような模様のような」この絵には、人類にとって途方もない価値を持つかも知れない「この世の真実(まだ解明されていない宇宙の物理的・数学的法則、秘密?)」のようなものが刻み込まれていたようなのです。
その絵をどうしても手に入れたい人物、あるいはその絵が存在するとまずい人物が闇で暗躍し…。
ネタバレはこのあたりで止めておきます。当初は単なる矢神家の財産相続争い、御家騒動だと思われたストーリーですが、「寛恕の網」の登場により一気に急展開を見せていきます。
そのストーリーの先に、亡き父と母の過去、楓の正体、そして怪しい矢神家の人々の本当の姿が見えていくことになります。