NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」に登場した言葉「五八さま」についてまとめます。
この「五八さま」という言葉は、現在も百貨店業界などで「暗号」として用いられています。
「五八さま」は業界用語
「五八さま」という言葉が飛び出したのは、常子たちが働く東京・深川の老舗仕出弁当店・森田屋でのシーンでした。
板前の長谷川(浜野謙太)のミスを発端に発生した「松弁当」と「竹弁当」の誤配送により、森田屋は得意先からの信用を失ってしまいます。
この一件に怒り心頭の大将・宗吉(ピエール瀧)は、常子(高畑充希)たち仕事に関わった従業員にたちに怒りをぶつけます。どうにも怒りが収まらない宗吉は、「大事な五八さま(ごはちさま)だったのによー!」と江戸っ子言葉で文句を言い続けます。
弁当業界のことがわからない常子らが「五八さま」という言葉を聞いてきょとんとしていると、宗吉の妻・照代(平岩紙)が代わりにその意味を説明してくれます。
五×八=四十 始終来てくれるお得意様
照代によれば、「五八さま」とは「五×八=四十(しじゅう)」からモジって「始終」、つまり「始終来てくれるお得意様」のことを指す言葉(符丁=ふちょう。合図のための隠語)とのこと。
長年のお得意様に対して「始終来てくれる」嬉しさを直接的に(露骨に)言うのも野暮というか失礼な物言いであり、「五八さま」とぼかして表現するわけです。
現代の商いの現場でも符丁は多い
現代の商いの現場でも、お客や得意先に失礼がないように「暗号、隠語(符丁)」を用いて表現、会話をする場面は多いですね。
有名な所では、飲食店などで従業員が「トイレ」の話をする時に「2番」あるいは「3番」といった番号を隠語として用います。
タクシー業界では、初乗り料金(710円)で乗る客を「納豆(=710)」と呼んだり、あちこちで客が手を挙げて呼び止めようとする「入れ食い状態」を「ゾンビ」と表現したり、大事件の犯人らしき人(あるいはタクシー強盗)が乗って来たら「大きな忘れ物」と隠語で無線により伝えたり…。
お客が知ったらギョッとするような内容の会話を、隠語で話していたりするわけです(笑)。