NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」に、女優のふせえりが登場しています。
ふせえりが演じる「日の出洋裁学校」校長・小山内節子は実在の人物とまではいえませんが、ドラマ内で小山内が巻き起こす騒動は、実際にあったエピソードが参考になっています。
この記事では、小山内節子が巻き起こす騒動(嫌がらせ)と、「とと姉ちゃん」モデル・大橋鎭子が実際に受けた洋裁学校からの「嫌がらせエピソード」などについてまとめます。
ハイセンスな教育?日の出洋裁学校
「日の出洋裁学校」は高級洋服に対応出来る洋裁技術を教える学校で、海外、特にフランスの高級ファッションを参考に「ハイセンス」な洋服づくりが学べることが売りです。
花山伊佐次(唐沢寿明)は日の出洋裁学校校長・小山内節子のもとに取材に出向きますが、学費が年額七百円と庶民には高額なこと、それに貴重な生地をふんだんに浪費して洋服をつくる制作過程など、その運営方針は雑誌「あなたの暮し」のコンセプトとは相容れないものであり、同学校の記事掲載は見送られます(小山内激怒)。
小山内の妨害工作
やがて雑誌「あなたの暮し」において、余った着物で作れる「直線裁ちの服」特集が大ヒットすると、小山内は自らの商いを脅かす存在となった「あなたの暮し出版」を露骨に敵視するようになります。
小山内は、常子発案による「直線裁ち講座」の募集(先着順)にも名前を変えて大量のハガキを送りつけ、開催当日に誰も受講者が来ないようにするなど、妨害工作を行なうのです。
大橋鎭子も洋裁学校から妨害を受けた
この洋裁学校の妨害工作エピソードは、史実で実際にあった出来事が参考になっています。
常子のモデル・大橋鎭子は、「暮しの手帖」の前身誌「スタイルブック」の資金稼ぎのために、昭和22年頃に「花森安治・服飾デザイン講座」を開催しています。和服を使った直線裁ちや、端布を使ったキルト風のもの、残り糸を使ってのセーターづくりなど、実践的な洋裁テクニックを参加女性たちに教えていました。
講座は東京でスタートし、やがて東北、北関東、四国などでも開かれました。「事件」が起きたのはこのうち、宇都宮市で開催された回でした。
切符は事前に完売しており、嬉々として宇都宮の会場に乗り込んだ鎭子らスタッフでしたが、会場には主催の新聞社の人たちしかおらず、待てど暮らせど受講者は来ませんでした。
どうやら「洋裁を知らなくても、すてきな服ができる直線裁ち」という題目がまずかったようで、「商売敵」である大手洋裁学校が切符を買い占めた上で不参加を決め込んでいたようでした。この「事件」は鎭子にとって、生涯忘れないとても辛い経験だったようです。
ドラマでも描かれていましたが、妨害工作を受けるということはそれだけ同業他社に脅威を与えているということでもあります。徹底的に読者に寄り添った雑誌、記事づくりが、後の「暮しの手帖(あなたの暮し)」の更なる躍進へと繋がっていくのです。