TBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」第3話より。
銀座食堂の看板娘・朝子(杉咲花)の初恋の相手だという鞍馬天狗の正体についてまとめます。また、これに関連して銀座食堂で朝子が大切にしている古いガラス瓶(花瓶)の正体が判明しています。
朝子の初恋の人は「鞍馬天狗」
第3話では、東京から松映撮影所のプロデューサー・夏八木修一が端島に来島し、約10年前に同島で撮影したヒット映画「燃ゆる孤島」の続編「続・燃ゆる孤島」を撮影すると宣言。島民を対象とした大規模な出演者オーディションが開催されました。
弟の竹男(番家玖太)にテレビジョンを買ってあげたい朝子(杉咲花)は、「食堂の看板娘」以外の何者かになってみたいという密かな願望も心に抱えながら、このオーディションに参加することになります。
迎えたオーディションの日。大勢の島民の観客の前で演技審査に挑み喝采を浴びた朝子は、舞台上で夏八木から「初恋の人は?」と質問されると、「鞍馬天狗!」と咄嗟に返答。夏八木はこの回答を受けて思わず「嵐寛寿郎!」と叫び、大喜びをしています。
【補足】
「鞍馬天狗」といえば、鞍馬山の奥の谷に住む天狗のこと。「鞍馬天狗」は能の題目になるなど、古くから民衆に人気があるキャラクターでした。
大正時代末期には大佛次郎による時代小説「鞍馬天狗」シリーズが誕生し、40年に渡る人気作に。同作は数々の舞台化、映画化が行われ、1928年(昭和3年)からは嵐寛寿郎主演の映画「鞍馬天狗」が大ヒットして46本にも及ぶ長期人気シリーズとなっています。
1955年(昭和30年)の端島の人たちも、当然「鞍馬天狗」と言えば嵐寛寿郎(通称・アラカン)であることを知っていたことでしょう。オーディションの舞台上で朝子が「初恋の人は鞍馬天狗」と発言したのを聞いた観客たち、そして鉄平は、朝子の初恋の相手は「アラカン」だと思ったことでしょう。
赤痢の朝子にガラス瓶をくれた「鞍馬天狗」
この「鞍馬天狗」なる朝子の初恋の相手の正体が、第3話の回想シーンで明かされています。
まだ朝子が少女だった頃。
朝子は、裕福な育ちの百合子が胸に光らせていた首飾りを羨ましく思い、海辺で光っていたガラス瓶を拾おうとして海へと転落。朝子はこれが原因で当時流行していた細菌性赤痢に感染し、島の集団隔離所での隔離生活を余儀なくされています。
そんなある夜のこと。母親にも怒られ隔離所でメソメソと泣いていた少女・朝子のもとに、「拙者の名は鞍馬天狗」と名乗る覆面の少年が出没しています。
少年は「お前が欲しかったのはこれであろう」と言って朝子が海辺で拾おうとしていたガラス瓶を渡すと、「赤痢には拙者もかかった。だがすぐ治る。さらばじゃ。」と朝子を励まして姿を消しています。朝子はそんな優しい「鞍馬天狗」に恋をしてしまったようです。
この覆面の少年「鞍馬天狗」の正体は、第3話のラストシーンで明かされています。
「鞍馬天狗」の正体は鉄平 朝子が大切にする食堂の花瓶
(※ここからは第3話のラスト、端島・銀座食堂におけるシーンの描写です)
銀座食堂で今日も忙しく働く朝子は、鉄平と二人で中ノ島(端島の隣の島)に行った際にとってきた山桜を古いガラス瓶に大切そうに飾っていました。※朝子がこのガラス瓶(花瓶)に大切そうに花を飾る姿がこれまでにも複数回描かれています。
古臭いガラス瓶に飾られた山桜を見た百合子(土屋太鳳)は、思わず「花瓶買ったら?」と朝子に言いますが、朝子は「いらん。こいでよか。鞍馬天狗にもろうたと」と返答をしています。
百合子と賢将(清水尋也)は「鞍馬天狗?なにそれ?わかんない」と怪訝な顔を見せますが、この言葉を一緒に聞いていた鉄平(神木隆之介)は以下の重大な事実に気が付くことになります。
・朝子が食堂で大切に飾っていた古い花瓶は、幼少期に「鞍馬天狗」にもらったガラス瓶であること。
・朝子のもとにそのガラス瓶を届けた「鞍馬天狗」は、他ならぬ鉄平自身であること。
恐らく鉄平は自分が「鞍馬天狗」を名乗って病床の朝子にガラス瓶を届けたことを忘れていたのでしょう。
過去の遠い記憶とこれまでの朝子の言動とが繋がり、朝子の想いに気がついた鉄平は、思わず朝子の顔を覗き込みます。照れながら顔をそらす朝子を見た鉄平は満更でもない嬉しそうな表情を見せて…。
【補足】
第3話の冒頭では、朝子に想いを寄せている賢将が食堂の花瓶を見て「今度花瓶買ってこようか?新しいの」と提案していますが、朝子は「う〜ん。まあよかかね。悪かし」と返答しています。このやり取りも伏線でしたね。