NHK土曜時代ドラマ「赤ひげ」の主人公・新出去定(にいで・きょじょう)の実在のモデル人物についてまとめます。
この実在の人物をもとに、ドラマの原作である山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」が創作されています。
弱気を助ける江戸のヒーロー・新出去定
ドラマ「赤ひげ」で船越英一郎が演じる医師・新出去定(通称・赤ひげ)は、幕府が開設した無料の医療所「小石川養生所」の責任者です。
貧しい者には懇切丁寧に無償で治療を行い、金持ちからは薬科を高く売りつけて資金を調達する、江戸の市井のヒーローです。
江戸時代の実在の医師・小川笙船がモデル
ドラマ「赤ひげ」は、山本周五郎の小説「赤ひげ診療譚」(1958年・昭和33年)が原作となっており、新出去定という人物も「赤ひげ診療譚」に同名で登場しています。
この新出去定というキャラクターは、江戸時代の実在の医師・小川笙船(おがわ・しょうせん=赤ひげ先生として知られる)がモデルとなり、創作されています。
小川笙船は医療所「小石川養生所」の開設を幕府にはたらきかけ、貧困と病気に苦しむ人々を手助けした医者として知られます。
貧しい病人のための「養生所」開設
寛文12年(1672年)に生まれた小川笙船は、江戸・小石川で町医者になると、享保6年(1721年)、貧しい病人のための医療施設設置を要望する意見書を、目安箱に上申しています。
翌年、小石川養生所の設置が幕府から認められると、笙船とその息子・円治がこの養生所の世話役に命じられています。
当初、小石川養生所の入所者は看病人のいない貧窮病人のみに限定されていましたが、後に貧しい病人であれば分け隔てなく収容されるようになり、広く貧しい病人たちの駆け込み寺的な存在になっています。
入所者は治療費、食費その他雑費が一切無料とされ、人口増加により貧民層も増えていた江戸下層民たちの強い味方となりました。
「赤ひげ診療譚」は、「赤ひげ先生」として知られる小川笙船の人物像をベースとし、長崎で遊学し江戸に戻ったばかりの青年医師・安本登や、様々な事情を抱えて養生所を頼る病人らの人間模様をストーリーに織り交ぜ、良質なヒューマンドラマへと仕立て上げられています。
▼同じく「赤ひげ診療譚」を原作とし、映画界に名を残す不朽の名作となった黒澤明監督作品「赤ひげ」(1965年)。NHK・船越英一郎版の「赤ひげ」はどこか柔らかい雰囲気を持った人物設定となっていますが、三船敏郎版の「赤ひげ」は無骨そのもの。
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