NHK連続テレビ小説「虎に翼」4月30日(火)放送の第22回より。この日の放送では、これまではるが毎日書き続けてきた日記が大きな証拠となり、寅子と穂高教授が裁判で直言の無罪を主張することを決意しています。
はるが使っている日記「主婦之手帖」は、117年の歴史を持つ婦人之友社の日記帳「Diary for simple life(主婦日記)」がモデルになっている可能性があります。
はるの日記が直言を救う?
1935年(昭和10年)に発生した汚職事件「共亜事件」により逮捕され、長期の勾留の末に贈賄の罪を自白してしまった猪爪直言(岡部たかし)。衰弱しきった様子で家に戻ってきた直言を見た寅子(伊藤沙莉)や家族たちは、直言の様子がおかしいことに気が付き始めると、直言の無罪を信じて事件の真相を調べ始めることになります。
弁護人を買って出てくれた穂高教授(小林薫)の指示により調書や裁判資料の徹底的な洗い直しを行っていた寅子ですが、なかなか突破口は見つからず。当事者である直言も口をつぐんだままです。
そんな時に大きな力となったのが、はる(石田ゆり子)が結婚以来30年間毎日書き綴ってきた猪爪家の生活の記録(日記)「主婦之手帖(主婦之燈社)」でした。
寅子は調書に残る供述内容とはるの日記の記述内容に以下のような矛盾があることを発見すると、家族を伴って「家族裁判」を実施。供述の矛盾を問い詰められた直言は、高井理事に頼まれて嘘の自白をしてしまったことを告白しています。
★供述と日記の矛盾点
・(調書)昭和9年5月4日、直言は接待を受け、株券の贈賄の件を承諾した。→(はるの日記)昭和9年5月4日、直言は家で夕食を食べ、(鯵の)味醂干しでごはんを3杯お代わりしている。
・(調書)昭和9年10月7日、直言は高井理事の指示で共亜紡績の株券を換金し浅松石油長本社長に受け渡した。→(はるの日記)昭和9年10月7日、直言は腹を下し会社を休んでいた。
・(調書)昭和10年2月20日、株取引(贈賄)のお礼として株券とはるへの着物を贈られた。着物は検事が家宅捜索で納戸から押収した。→(はるの日記)その着物ははるが自分のへそくりで買ったもので、買い物の日付もへそくりのやりくりもすべて記録してある。
・合計14件、調書の証言とはるの手帳の記録の齟齬が発見される。
はるの日記「主婦之手帖」は「主婦日記」がモデルか
はるは主婦之燈社が発行している「主婦之手帖」を使い、毎日の食事の記録、家族の体調の変化、家族それぞれの出来事や発言などを30年間書き溜めて来ました。振り返ってみると、ドラマ序盤からはるが猪爪家の毎日の出来事を日記に残している姿が繰り返し描かれていましたね。
第4週・第20回(4月26日放送)では、検察官の日和田(堀部圭亮)らが突然家に押しかけて家宅捜索を行っていますが、はるは「気が動転している時は記憶が曖昧になるから、このことは絶対忘れないように」と言ってこの日も欠かさずに日記を付けています。
はるが使っていた「主婦之手帖」は、今から117年前の1907年(明治40年)に婦人之友社が生み出した「主婦日記」(現在の「Diary for simple life〜主婦日記」)がモデルになっているのではないかと思います。
1903年(明治36年)に「家庭之友」を創刊し、その歴史をスタートさせた婦人之友社。翌年に創業者の羽仁もと子案による「家計簿」を誕生させると、1907年には「主婦日記」をリリースしています。
「主婦日記」は、はるが使っていた「主婦之手帖」と同様に、毎日の出来事や献立、家族の体調、月謝や学費の納入日、今後の予定、家事の年間計画などを書き溜めていく「主婦のための日記帳」。
毎晩10〜15分、その日の仕事や行動を振り返って記録をし続けていくことで、毎日の生活が整理され、翌日からの行動も効率化されていきます。
家計簿をつけると自分の消費行動が客観化され生活が改善していきますが、「主婦日記」はそれを生活全体に適用し、より豊かに暮らしていこうとするものです。
「虎に翼」の序盤では「専業主婦」の花江(森田望智)が社会に参加していないことに引け目を感じる描写などがありましたが、ここに来て「専業主婦」のプロフェッショナルであるはるの日々の積み重ね=日記が絶大な効力を発揮しています。