NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の物語のモチーフ(原案)となっている『「暮しの手帖」とわたし』という本をご紹介します。
この本は、ドラマヒロイン・小橋常子(高畑充希)のモデルとなっている編集者・大橋鎭子氏の「唯一」の自伝として知られます。
大橋鎭子氏の人生がドラマのモチーフ
「とと姉ちゃん」は、ヒロイン・小橋常子が女ばかりの小橋一家を支え、やがて女性のための生活情報誌「あなたの暮し」を家族とともに立ち上げ、奮闘する姿が描かれます。常子のモデルとなっているのは、雑誌「暮しの手帖」の創業者・大橋鎭子氏(2013年没)です。
NHKによれば「とと姉ちゃん」の物語は、
※実在の雑誌群や、人物などをモチーフとしていますが、戦前戦後の昭和史を大いなる愛をもって生きていくある家族の物語として大胆に再構成し、登場人物や団体は改称し、フィクションとしてお届けします。
とのこと。これまでの朝ドラ同様、実話と創作を混ぜ合わせた構成となりそうです。
大橋鎭子氏唯一の “自伝エッセイ”
▼「ポケット版」には特別付録として脚本家・西田征史氏による解説と、大橋氏が93歳で亡くなるまでのエピソードが収録されています。
「とと姉ちゃん」のストーリーの「モチーフ」となっているのは、大橋鎭子氏唯一の “自伝エッセイ” である『「暮しの手帖」とわたし』です。ドラマに合わせて新たに発売された「ポケット版」の帯には「ドラマモチーフ本」と書かれていますが、これは史実を大幅に改変するためだと思われます。
『「暮しの手帖」とわたし』は大橋氏本人の文章により、氏の生い立ち、家族環境から、女学校時代、就職、そして「暮しの手帖」名物編集長となる花森安治氏との出会い、創業、雑誌づくりの日々などが綴られています。
柔らかく読みやすい文章
さすがに文章を生業の一つとしていただけあって(そして花森安治氏から厳しく指導されていただけあって)、大橋氏の綴る文は終始平易で読みやすく、その柔らかく上品な文体は、読む人の心を温かくする不思議な力があります。
特に、大物作家への原稿依頼、「暮しの手帖」編集部のアットホームな雰囲気、同誌の名物企画となった「商品テスト」について、それにアメリカ国務省の招待で実現した二ヶ月間のアメリカ視察旅行での様子など、当時の雑誌づくりの様子や、編集者がどのようなことを考えながら仕事をしていたかなどが丁寧に語られており、「暮しの手帖」ファンでなくとも楽しめる自伝となっています。
「ほんとうにおっかなくて、でもとても痛快な人でもありました」と大橋氏が語る名物編集者・花森安治氏(ドラマでは花山伊佐次=唐沢寿明=として登場)とのやり取りをはじめ、「とと姉ちゃん」登場人物のモデルとなっているであろう人物も多数登場するなど、「とと姉ちゃん」を楽しむためにも読んでおいて損はない一冊です。
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