NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」2016年7月7日(木)放送回で、「仙花紙(せんかし)」という言葉が出てきました。
この記事では、戦後の混乱期の出版文化にも貢献したとされる仙花紙についてまとめます。
雑誌「スタアの装ひ」 問題は紙の工面
いよいよ、初めての雑誌「スタアの装ひ」の制作をスタートさせた小橋家三姉妹。戦後の慢性的な物資不足の中、雑誌のための紙を確保したい常子は、叔父・鉄郎(向井理)に紙の工面を頼みます。
鉄郎は何とか闇市で紙を売ってくれる男を見つけ出すのですが、その男から提示された紙の金額は、800枚で500円。予想外の高額提示に戸惑う常子たちでしたが、その場に居合わせた水田正平(伊藤淳史)の指摘により、その紙は「仙花紙」という粗悪品であり、闇市でなくても手に入るものだということがわかります。
戦後の出版文化に功績 「仙花紙」とは?
この「仙花紙」は、戦後の紙不足の中で出回った機械漉きの粗悪な洋紙です。クズ紙、古紙などを漉きなおしたもので、大変に劣化しやすい紙でした。
仙花紙は、品質としては決して良いものではありませんでしたが、一方で、戦後の紙不足の時代の出版文化を支えた貴重な存在でもありました。
安価な仙花紙を用いて作られたB級の娯楽誌は「カストリ雑誌」と呼ばれ(=紙のカスをとって作られた雑誌、という意味。エログロなど、安直で刺激的なものが多かった)、娯楽に飢えていた庶民の欲求を満たしていたようです。
語源は高級和紙「泉貨紙」か
なお、同じ呼び名である高級和紙「泉貨紙(せんかし)」(=戦国時代に四国の泉貨という人が発明。コウゾを原料とした良質で強靭な手漉き和紙)は、この「仙花紙」とはまったくの別物。
終戦後、紙は統制下にあったため、それを逃れるために統制除外品であった和紙「泉貨紙」の名前を拝借し、「仙花紙」と呼ばれたという説が有力のようです。
インディーズからの出発
「失うものは何もない」状態でスタートした、常子たち三姉妹の雑誌づくり。水田の助言が功を奏し、500円提示のところを40円の言い値で仙花紙を手に入れ、いよいよ雑誌「スタアの装ひ」創刊が現実のものになっていきます。
統制の網をかいくぐった「仙花紙」を用いるところなども、常子の雑誌がインディーズからの出発であることを象徴しており、ワクワク感があります。
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