NHK連続テレビ小説「わろてんか」第10週に登場した古典落語の演目「崇徳院(すとくいん)」。
この記事では、落語「崇徳院」の内容、それに繰り返し登場する「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」の歌の意味などをまとめます。
上方定番の古典落語「崇徳院」
「崇徳院」は、上方落語の定番演目のひとつ。東京でも多少の設定変更がなされ、江戸落語の演目として定着しています。
「わろてんか」に「崇徳院」が登場したのは第10週、12月7日(第58回)放送あたりです。「ニセ団吾」を騙って日銭を稼いで来た団真(北村有起哉)が、寝起きの藤吉(松坂桃李)の前で披露した演目が、師匠・先代団吾の十八番だという「崇徳院」でした。
崇徳天皇が詠んだ句「瀬をはやみ〜」から着想
落語「崇徳院」は、崇徳院こと崇徳天皇(第75代天皇。1119〜1164年)が詠んだ小倉百人一首77番「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」の歌を題材にしています。
商家の若旦那が、名も知らぬ美しい娘と出会って「恋わずらい」に陥り重病となり、そのとばっちりで出入りの職人「熊さん」がその娘探しに奔走させられるという噺です。
名も知らぬ美しい娘が残した、崇徳院の句
商家の若旦那が神社に参詣した際に茶店で目にした、とびきり美しい娘。娘は茶店を出る際に「茶袱紗(ちゃぶくさ。茶器を取り扱うときに用いられる布)」をはらりと落としてしまうのですが、それを若旦那が拾って娘に渡したところ、娘はそれに喜び、若旦那のそばに短冊を置いて会釈をしてその場を立ち去っていきます。
その短冊に書かれていたのが、崇徳院が詠んだ
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」
の歌でした。歌の意味としては、「早く流れ、岩にぶつかって二つに分かれた川の流れが、やがてひとつに合流するように、いずれあなたともまたお会いして、一緒になりたいと思っています」といったようなもの。
美しい娘にこんな恋歌を送られてしまっては、若旦那もメロメロになってしまいます。
若旦那は名前も知らず、再び会えるかもわからない娘に対して「恋わずらい」を発症してしまい、ついには医者から気の病により残り五日の命と宣告されてしまうのです。
とばっちりの熊さん
この騒動の「とばっちり」を食らったのが、商家出入りの職人「熊さん(熊五郎)」でした。熊さんは親旦那から呼び出され息子の病状を探らされ、どうやら「恋わずらい」が病の原因だと判明すると、「瀬をはやみ〜」の句だけを頼りにして、その娘を見つけてくるように頼まれてしまうのです。
借金の帳消し、住んでいる借家の譲渡などの破格の条件をもらって頼まれたものの、「瀬をはやみ~」の句以外に何の情報も持たされていない熊さんにとって、娘探しは厄介ごとそのもの。熊さんは文句タラタラ、人が多く集まる「床屋」「お湯屋」などを駆けずり回り、「瀬をはやみ~」の「出会いの呪文」を唱えつづけますが、果たして娘は見つかるのか…。
崇徳院の噺とリンクしていく?ストーリー
「わろてんか」第10、11週では、下の句「われても末に あはむとぞ思ふ」(わかれても再び一緒になる)の部分をモチーフに、てん・藤吉夫婦、それに団真・お夕夫婦の仲違いと修復の様子が描かれます。
落語「崇徳院」では、若旦那側だけでなく実は娘側も「恋わずらい」に陥っており、熊さん同様に娘側の代理人も若旦那探しに駆り出されていました。そして、艱難辛苦の末に代理人同士が出くわす展開となります。
厄介ごとを押し付けられて不満タラタラの(そして一刻も早く報酬を手にしたく気が逸る)代理人二人は、出会った瞬間に怒りのぶつけどころ(相手代理人)を見つけて鏡を割るほどの大喧嘩となってしまい(笑)、最後のオチへと繋がっていきます。
「わろてんか」第10週のストーリーでも、仲違いした夫婦(藤吉てん、団真お夕)を「われても末に あはむとぞ思ふ=元サヤ」とするために、周囲の「代理人」(風太、おトキ、てん)らが奔走しており、「崇徳院」の噺を思わせるようなストーリーとなっています。
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