NHK連続テレビ小説「あさが来た」12月12日(土)放送分より。
この日登場したあさの「座右の銘」ともなる言葉、「九つ転び十起き(ここのつころび・とおおき)」についてまとめます。この言葉は、あさのモデル・広岡浅子のペンネーム「九転十起生」が由来となっています。
炭鉱事故で再び暗雲
娘の千代が生まれ、新次郎(玉木宏)の夜遊びもなくなり、炭鉱事業も順調…。
すべてがうまく回り始め、「ちょっとうまいこといきすぎ」とすら感じていたあさ(波瑠)でしたが、炭鉱の落盤事故という一大事が発生し、再び苦難の日々が始まります。
落ち込むあさを慰める新次郎
落盤事故の処理費用、怪我した親方への見舞金、それに坑夫たちへの補償金…。銀行設立どころか借金地獄に逆戻りし、加野屋に迷惑をかけてしまったと落ち込むあさを、新次郎は優しい言葉で慰めます。
「負けたことあれへん人生なんか、面白いことあれへん。勝ってばかりいてたら人の心なんてわからへんようになります。神さんがくれはった試練なんです。七転び八起きいいますやろ」
これを聞いたあさは、自分はまだ「御維新」「今回の落盤事故」それに「つわり」ぐらいしか転んでいないことに気付き、傍らでスヤスヤと眠っている千代に対し、以下のように語りかけます。
九つ転び十起きや!
「お母ちゃんな、お父ちゃんが言わはったとおり、七転び八起き、いや、九つ転び十起きや思て、負けしまへんで!」
新次郎は「まだそない転ぶつもりなんかいな!」と呆れながらも、元気を取り戻したあさに安心するのでした。波乱万丈の人生を歩み続けるあさらしい、強く前向きな言葉ですね。
▲「九つ転び十起き」が出来るのも、優しい新次郎と娘・千代の存在があるからこそ?(※画像は「水曜どうでしょう」に登場した「姫ダルマ」とだるま一家。)
Photo by: nhayashida
「九転十起生」は広岡浅子のペンネーム
「九つ転び十起き」という造語は、あさのモデル・広岡浅子にとっても「座右の銘」といえる言葉でした。
浅子は「九転十起生(きゅうてんじゅっきせい)」の精神を胸に、両替屋の維新期の混乱、炭鉱事業の失敗、銀行の創業、日本女子大学校設立への参画、大同生命立ち上げと、明治希代の事業家として偉大な足跡を残しています。
自身の人生をよく表した「九転十起生」というワードを浅子も気に入っていたようで、文章の寄稿などをする際(宗教新聞「基督教世界」に連載を持っていた)のペンネーム、筆名としても用いていました。
「七転び八起き」「七転八倒」よりもさらに多くの数の失敗をする覚悟を持ち、事業にあたった浅子。その強い決意が、後世まで残る大きな事業を成し遂げる原動力になったといえます。
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