NHK連続テレビ小説「花子とアン」の第8週より。
甲府の尋常小学校に赴任した安東はな(吉高由里子)が、貧乏ゆえに親戚に引き取られ学校を離れなければならない生徒・小山たえ(伊藤真弓)のためにある「みみずの物語」を聞かせる場面がありました。
この場面では、本や文学に興味を示すたえに優しく自作の物語を聞かせる先生、という「ほっこり」な印象を受けましたが、実はこの元ネタであり実在する村岡花子作の童話「みみずの女王」(『村岡花子と赤毛のアンの世界』(河出書房新社)第三章に収録)は結構ブラックな内容だったりします。
安東はながたえに語ったのは、以下の部分まで。語りの途中で朝市(窪田正孝)が入って来たため、そこで中断しております。
あるところに、たいそう太った長いみみずがおりました
「あたしのように立派な体を持ったみみずは、どこにもいやしない
お庭から道端から、どこからどこまで探したって
あたしほどの器量好しは見つからないわ」
こんなことを口にするほどの いばりんぼうでしたから、
お庭じゅうのみみずは、みんなこの太ったみみずが嫌いでした…
(以上。ここから辛辣な展開に…)
村岡花子作「みみずの女王」フト子さんは食べられてしまう…
村岡花子作の「みみずの女王」のあらすじは、以下のような感じです。
・ある家の庭に、たいそう太ったみみず「フト子」さんが居ました。フト子は庭じゅうや道端を探しても自分よりも立派なみみずはいないといつも口にしており、庭に居る痩せたみみずたちはそんなフト子を嫌っていました。
・一方、森にいるセキレイの巣では4羽のヒナたちが毎日お腹を空かせていました。お父さんは毎日必死にエサを集めますが、それでも食べ盛りのヒナたちは満足できません。
・ある日、お父さんセキレイはフト子の庭へやってきました。庭に居た痩せたみみずたちは一斉に土の中に隠れましたが、フト子は大きな身体のために隠れる事ができませんでした。お父さんセキレイに見つかってしまったフト子はそのまま巣へと運ばれ、ヒナたちのエサになってしまいました。
・ヒナたちは生まれて初めて満腹になり、セキレイの巣ではフト子のことを「立派なみみずだ!」と大層誉め称えたのでした。フト子がそれを聞いたらさぞ得意満面になるところでしたが、残念ながらフト子はすでに、誉め称えられていることがちっともわからなかったのでした…おわり。
本当は恐い?名作童話たち
…大まかの話の流れはこんな感じです。傷心の生徒・たえさんに聞かせるには随分とキツいお話だとは思われます(笑)。あるいは貧乏で空腹に耐えていたたえに対して、何か励ましや教訓めいたものを残そうとしたのでしょうか。
「赤ずきん」にしろ「ヘンゼルとグレーテル」にしろ、残酷で恐い描写というのは童話によくある話ですね。