NHK連続テレビ小説「あんぱん」第11週に登場する小倉連隊の先輩兵士・馬場についてまとめます。
嵩にきつくあたる古参兵・馬場役を演じるのは、朝ドラ「なつぞら」などへの出演で知られる俳優・板橋駿谷です。
嵩の愛読書を踏みにじる 古参兵・馬場
1942年(昭和17年)夏。九州の小倉連隊に入隊して内務班に配属された嵩(北村匠海)は、そこで暴力が行き交う理不尽な世界に遭遇することになります。
小倉連隊といえば、九州各地から勇猛果敢な荒くれ者が集まった血の気の強い集団。入隊した嵩はさっそく先輩兵士から厳しい指導を受けると、ここでやっていけるのかと暗い気持ちになってしまいます。
嵩に対し特に厳しく当たるのが、古参兵で新兵教育係である馬場(板橋駿谷)でした。
嵩は入隊の際に愛読書である井伏鱒二の詩集を持参していましたが、これが馬場に見つかってしまうとビリビリに破られて踏みつけられてしまいます。
それを見ていた上等兵の八木信之助(妻夫木聡)は馬場の行き過ぎた行動を止めると、嵩に「軍人勅諭(ぐんじんちょくゆ)」の暗記を命じて…。
▼第27回放送では、東京高等芸術学校に入学したばかりの嵩が銀座の本屋で井伏鱒二の「厄除け詩集」を手に取るシーンが描かれています。
小倉連隊に所属 戦争嫌いのやなせたかし
嵩が小倉連隊で軍隊生活を経験していく日々の描写は、モデル人物であるやなせたかしの戦争体験がもとになっています。
九州各地のツワモノたちが集った小倉第12師団・西部73部隊(野戦重砲隊)に入隊したやなせたかしは、そこで古参兵たちが暴力を振るう姿を目撃しています。
小倉連隊の先輩兵士たちは炭鉱や荷役の仕事をしていた人が多く荒っぽかったそうですが、どこかカラッとしていて基本的には陰湿ではなかったそうです。それでも古参の兵士たちの中には威張り散らす者もおり、古参兵が初年兵をくだらないことで殴る姿を目の当たりにするなど、やなせたかしは軍隊生活の理不尽さを体験しています。
やなせたかし自身は、入隊後すぐに班長(三船敏郎のような九州男児)の当番兵を命じられて班長の身の回りの世話に明け暮れています。結果的に終始班長のそばにくっついて行動していたため、先輩兵士たちのいじめの対象にはならなかったとのこと。
入隊から数カ月後、やなせたかしは幹部候補生の試験を受けて下士官の伍長になると、部下を殴ったりせずいつも楽しい話をしてくれる「柳瀬軍曹殿」は若手兵士から人気になったのだとか。
「あんぱん」ではこうしたやなせたかしの入隊時のエピソードをもとに、意地悪な古参兵・馬場や、嵩の味方になってくれるインテリ上等兵・八木の姿など、小倉連隊での人間模様が描かれていきそうです。
▼やなせたかしの戦争体験を知りたければこの一冊。やなせたかし著「ぼくは戦争は大きらい」は、軍隊所属時代のやなせたかしの足跡や心情が本人により詳細に語られています。後の正義のヒーロ・アンパンマン誕生につながる、重く苦しい時代の貴重な記録です。

個性派肉体派俳優・板橋駿谷 「なつぞら」でブレイク
古参兵・馬場役を演じているのは、福島県須賀川市出身の40歳の俳優・板橋駿谷(いたばし・しゅんや)です。日本大学芸術学部(演劇学科)在学中には日芸のラグビー部に所属したほか、現在も筋トレや空手などを特技とするなど筋骨隆々の肉体派であり、小倉連隊の荒くれ者役を演じるのに適任かと思われます。
学生時代から小劇場の舞台に立ち、卒業後は演劇集団「さんぴん」を旗揚げするなど舞台俳優として活躍していた板橋駿谷。
映画「SR サイタマノラッパー」「日々ロック」に出演するなど個性派俳優として活動を見せていた板橋駿谷に大きな転機が訪れたのが、2019年の朝ドラ「なつぞら」への出演でしょう。
当時34歳だった板橋駿谷は、「なつぞら」でヒロイン・なつ(広瀬すず)が通う十勝農業高校の同級生・門倉 努でレギュラー出演。「番長」と呼ばれていた門倉は、密かに想いを寄せるなつに近づくために演劇部に入部してなつにプロポーズしたり、富田望生演じる居村良子と丁々発止の演技を見せたりと強烈なキャラクターでドラマを盛り上げて大きな注目を集めています。
「なつぞら」への出演でブレイクした板橋駿谷は、その後もドラマ「ハムラアキラ〜世界で最も不運な探偵〜」「青天を衝け」「ネメシス」や映画「ライアー×ライアー」「サマーフィルムにのって」「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 ファイナル」などの人気作に出演。
2021年からはNHK Eテレの理科教育番組「漂流兄妹〜理科の知識で大脱出!?〜」に筋肉自慢漁師の兄・しゅんや役でメイン出演するなど、活躍の場を広げています。

▼現在昼の再放送枠で放送中の2017年朝ドラ「とと姉ちゃん」では「あなたの暮し出版入社最終試験参加者役」というチョイ役で出演をしており、「あんぱん」が3作目の朝ドラ出演になるかと思います。
