NHK連続テレビ小説「あんぱん」第12週では、小倉連隊の遠征で中国・福建省に駐屯中の柳井嵩が「宣撫班(せんぶはん)」に任命され、地元の人への啓発活動として紙芝居「双子の島」を作ることになります。
この紙芝居「双子の島」は、嵩のモデルである漫画家・やなせたかしが従軍中の中国で実際に作った紙芝居「双子ものがたり」がモデルになっていますので、製作された経緯やストーリーの内容(あらすじ)などをまとめます。
【あんぱん】宣撫班で紙芝居「双子の島」を作る嵩 日中友好を願う内容

戦争の時代に突入し、1942年(昭和17年)夏に九州福岡の小倉連隊に入隊した柳井嵩(北村匠海)。
内務班に配属された嵩はそれから2年ほどを小倉で過ごすと、連隊に対し中国福建省の奥地への出動命令が出たことを受け、いよいよ日本を離れて戦地へ渡ることになります。
中国に渡った嵩は、絵が得意である才能を買われて宣撫班(せんぶはん)に配属されます。宣撫班は地元民である中国人に医療や娯楽を提供し、日本軍に親しみを覚えさせた上で占領に協力してもらう広報宣伝部隊のような役割を担う部署です。
宣撫班は当初、日本の古典である「桃太郎」などの紙芝居を上演して中国人に見せていました。ところが中国人たちが「日本人は嘘つきだ」などと騒ぎ出したことから、嵩は上官の命令により新しい紙芝居を作ることになります。
親友の辛島健太郎(高橋文哉)の協力を得て完成したのが、日本と中国を兄弟に見立てた「双子の島」という紙芝居でした。
嵩は、父・清(二宮和也)が手帳に書き記していた「東亜の存立と日支友好は双生の関係だ」という言葉や、旧友で同じ駐屯地にいる岩男(濱尾ノリタカ)が現地の中国人の少年・リン(渋谷そらじ)と仲良くしている様子などを見て、日中友好をイメージさせる内容の紙芝居を思いついたのでした。
【史実モデル】やなせたかしが作った紙芝居「双子ものがたり」その内容とは?
▼やなせたかしの戦争時代を知りたいのであればこの一冊。名著「ぼくは戦争は大きらい」では、部下に優しく大人気だった「軍曹殿」やなせたかしの姿や、無謀な任務に立候補してしまった弟・千尋との最後の会話、従軍中でも芸術活動を続けた根っからのアーティストぶりなどが語られています。

柳井嵩が中国人向けに紙芝居「双子の島」を創作するエピソードは、嵩のモデルになっている漫画家・やなせたかしが中国での従軍中に紙芝居「双子ものがたり」を創作した史実がもとになっています。
※ドラマでは「双子の島」の名前で登場する予定のこの紙芝居ですが、やなせたかしによる詩「紙芝居」では「双子ものがたり」の題名で登場し、当時が回顧されています。またやなせたかし著「ぼくは戦争は大きらい」ではこの紙芝居は「双子の兄弟の物語」と表現されています。
戦時中に九州の小倉連隊に所属し、1943年(昭和18年)に出動命令が下って中国の福州(現在の中国福建省福州市)の農村地帯に駐屯することになったやなせたかし。
絵が得意だったやなせたかしは現地で宣撫班の任務を担うようになると、自作の紙芝居である「双子ものがたり」を創作。宣撫班は農村地帯をまわり、老若男女の中国人の前で「双子ものがたり」が上演されています。
大きな模造紙に描かれた紙芝居「双子ものがたり」は以下のような内容でした。突然海から上陸してきた日本軍に敵対心を持たないように、日中友好を謳った内容となっています。
★紙芝居「双子ものがたり」おおまかな内容
2つの島に生き別れて暮らしていた双子の兄弟の物語。
この双子の兄弟はずっと2つの島で別れ別れに暮らしていたが、どちらかが傷つくともう一人も痛みを感じるという「一心同体」の肉体を持っている。
ある時、兄弟の一人が食べ物を求めてもう一つの島に渡る。そこにいたのは、顔が汚れたもう一人の兄弟。二人はお互いが兄弟であることを知らずに直接戦うことになる。ところが、相手を殴るとなぜか自分も痛みを感じてしまい、相手も自分のことを殴るとなぜか痛がっている…。
無益な戦いを繰り返した後、二人は互いが一心同体の双子の兄弟だったことを知り、最後には戦いをやめる。2つの島は、互いに足りないものを分け与えるようになり、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
やなせたかしによれば、この紙芝居は亡き父・柳瀬清が朝日日日新聞で記者をしていた際に手帳に書き残した「東亜の存立と日中の親善は双生の関係になる」という言葉から着想を得て完成させたとのこと。
紙芝居「双子ものがたり」はたちまち現地の人たちに大人気となり、紙芝居を上演するとなると大群衆が押しかけたのだそう。また、上演後には大喜びした現地の中国人たちから宣撫班の面々にご馳走が振る舞われ、やなせたかしも豚肉料理やラーメンのような麺類などを楽しんだそうです。
「双子ものがたり」の思い出を綴ったやなせたかしの詩「紙芝居」は、以下のような言葉で締めくくられています。
ぼくは今の中国を
ぜひ父に見せたいと思います
終生中国を愛した父は
何というでしょうか
宣撫班の活動の中で、生身の中国人と身近に触れ合っていったやなせたかし。
「南京大虐◯はなかったのではないか」といった発言が注目されたこともあるやなせたかしですが(やなせたかしは南京にも足を踏み入れ、当時の平和な空気を実感していた)、それもこれも実際に現地の中国人とじっくり触れ合ったからこその考えのようです。※やなせたかしは基本的にリベラル思想の人です。
このあたりの考え方ややなせたかしの戦争観、遠征先の中国でのリアルな空気感などは、自著「ぼくは戦争は大きらい」に詳しく書かれています。興味がある方は是非ご一読を。
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