NHK連続テレビ小説「あんぱん」より。東京高等芸術学校図案科に進学した嵩が出会う不思議な曲「図案科の歌」についてまとめます。
この「図案科の歌」は、やなせたかしが東京高等工芸学校図案科時代に出会った実在の曲。その不思議な歌詞とリズムの魔力が、やなせたかしの人生を前向きに支え続けています。
座間先生が教える「図案科の歌」

嵩(北村匠海)は東京高等芸術学校図案科に入学すると、自由な気風の中で美術やデザインを学んでいくことになります。
図案科の担任教師である座間晴斗(山寺宏一)は型破りな人物で、「机で学ぶことは何もない。おまえら銀座に行け!」と生徒たちをけしかけていきます。

嵩は座間先生の自由闊達な考えに大きな影響を受けていくことになりますが、もう一つ嵩の人生に刻まれていきそうなのが、座間先生が教えてくれる「図案科の歌」です。
意味不明な言葉が並ぶ「図案科の歌」ですが、その不思議な魅力を感じた嵩はこの歌を気に入っていくようです。
この「図案科の歌」は柳井嵩のモデルである漫画家・やなせたかしが美術学校時代に出会った実在の歌ですので、以下にどのような歌だったのかなどをまとめておきます。
代々受け継がれた「東京高等工芸学校 図案科の歌」
1937年(昭和12年)に官立旧制東京高等工芸学校 図案科(現在の千葉大学工学部総合工学科デザインコース)に進学したやなせたかしは、自由な気風の中で美術やデザインの基礎を学んでいます。
図案科の担任教師・杉山豊桔(すぎやま・とよき)先生の「一日に一度は銀座に出て遊びなさい。芸術は吸収するだけではなく、街でこそ吸収するものだ」という言葉に大きな影響を受け、仲間たちと切磋琢磨していく中で豊かな創造性を育んでいったやなせたかし。
そんなやなせたかしにとって忘れられないのが、図案科の生徒たちの間で歌い継がれていた「東京高等工芸学校 図案科の歌」でした。
「ちくま評伝シリーズ<ポルトレ> やなせたかし」に「図案科の歌」の歌詞が掲載されていますので、以下に引用しておきます。なかなか意味不明な歌詞ですが、不思議と語呂とリズムが良く、口ずさみたくなる魔力があります。

「図案科の歌」歌詞は?やなせたかし・独自解釈歌詞も存在
★「東京高等工芸学校図案科の歌」歌詞
ワッサワッサワッサリンノ モンチキリンノホイ
ヤカンリカンガ ヒッキリモッキリノリー
シャップラポー シャップラポーワサキュー
リキュラカ ヒキュラカ チャカランポー
ウツウツ パイパイ
この「図案科の歌」は、当時の東京高等工芸学校図案科の生徒たちの間で代々受け継がれていたもの。毎年新入生歓迎会の席で先輩から後輩に教えられるものだったそうです。
意味はさっぱりわからないけれど、歌っているうちに不思議と笑顔がこみ上げる…。「図案科の歌」は自由闊達な空気の中で仲間たちが助け合いながら学んだ、当時の東京高等工芸学校図案科の気風を象徴するかのようなハッピーな歌だったようです。
やなせたかしはこの「図案科の歌」が大のお気に入りだったようで、勝手に以下のように歌詞を解釈して頭の中で響かせていたようです。こちらも「ちくま評伝シリーズ<ポルトレ> やなせたかし」からの引用です。
★「図案科の歌」やなせたかし・独自解釈バージョンの歌詞
うれしいじゃないか みんなで騒ごうぜ
難しい理屈なんか茶化してしまえ
自由に生きよう ワサビ酒ひっかけ
シャッポふってブラボー ウツな気分よバイバイ!
この「図案科の歌」が与えてくれる前向きなパワーは、苦労多き人生を送ることになるやなせたかしを支えていきます。
辛い時や答えが出ない時、難しいことを考えるのは止めて自由に生きていこう!ウツよバイバイ!
図案科時代に学んだ「自由に楽しく生きる」という精神は、生涯に渡りやなせたかしの生きる指針となり、「アンパンマン」の誕生へと繋がっていきます。
その精神の象徴ともいえるものが「図案科の歌」だったというわけです。