NHK連続テレビ小説「半分、青い。」で、やがて鈴愛と律が開発することになる革新的な「そよ風の扇風機」。
この劇中に登場する扇風機に関して、革新的なプロダクトを生み出し続けている日本のメーカー・バルミューダの代表取締役社長、寺尾玄氏が「劇中製品開発部分原案」として関わることがわかりました。
この記事には「ネタバレ」となる部分も含まれますのでご注意ください。
「ひとりメーカー」を立ち上げる鈴愛
涼次(間宮祥太朗)との結婚生活が破綻し、シングルマザーとなった鈴愛(永野芽郁)。
鈴愛は、胡散臭い事業家・津曲雅彦(有田哲平)やその妹で主婦のかたわら一人で会社を立ち上げた加藤恵子(小西真奈美)らと出会う中で、自身も「ひとりメーカー」を立ち上げ、身近な人々のために役立つ製品を開発するという事業を始めることになります。
そんな頃、同じく「ひとりメーカー」を立ち上げようと考え始めていた律との会話の中で、「そよ風の扇風機」というアイディアが浮上していきます。
鈴愛は律と手を組み、病気と直面している母・晴(松雪泰子)のためにやさしい風を届けてあげようと、そよ風が心地いい革新的な扇風機(名前は「マザー」か?)の開発に着手することになります。
この扇風機の開発を通して、長年すれ違いを続けていた鈴愛と律はようやく公私ともに心が繋がっていくことになります。
「バルミューダ」創業者・寺尾氏が「劇中製品開発部分原案」
「鈴愛がいずれ革新的な扇風機を発明する」というあらすじから、この扇風機は「バルミューダ」をモデルにしているのでは?という声が以前から出ていました。
おおかたの予想通り、7月19日にNHKから発表された追加キャストとともに、革新的なDC扇風機「Green Fan」を世に送り出した「バルミューダ株式会社」の代表取締役社長・寺尾玄氏が「劇中製品開発部分原案」として番組に関わることが発表されており、鈴愛の扇風機開発の様子は「バルミューダ」の「Green Fan」開発の過程がモデルになりそうです。
※同時に、「LED デスクライト」でグッドデザイン賞を獲得した「ビーサイズ株式会社」の代表取締役・八木啓太氏が、「ひとりメーカー考証」として番組に関わることが発表されています。
※「半分、青い。」の物語ならびに鈴愛という人物自体は、モデルの存在しない架空(フィクション、ドラマオリジナル)のものとなります。
たたき上げの「発明家」寺尾玄氏
「バルミューダ」といえば、世界各地を放浪した元歌手でバンドマンの寺尾玄氏が、オランダのデザインに憧れて2003年に立ち上げたプロダクトメーカー。
寺尾氏は、独学でアイディアをおこした図面を町工場に飛び込みで持ち込み、断られ続けながらもいくつかの理解者を得て工作機械を貸してもらい、自ら機械の使い方を実践的に覚えて製品を作り上げていった、「たたき上げ」のクリエイターです。
当初はノートパソコンの冷却台、デスクライトなどを製作販売していましたが、倒産の危機に瀕していた2010年にDC(直流)扇風機の先駆けとなる「Green Fan」を発売し、起死回生の大ヒットを記録しています。
「Green Fan」は、寺尾氏が少年時代に感じたエアコンの風への違和感と、屋外の遊びの中で感じた自然の風の気持ち良さが開発の原動力となっています。
寺尾氏はこの優しい「自然の風」を扇風機で再現しようと考え、画期的な二重構造の羽根と、よりゆったりとした風速を実現できるDCモーター(しかも従来よりも省エネ)を世界で初めて扇風機に採用(それまでの扇風機は交流のACモーターを使うことが常識だった)。見事、革新的な扇風機「GreenFan」を完成させ、大ヒットに繋げています。
壁に扇風機の風を当てていた町工場の職人さん
ちなみに、従来の扇風機の風と「GreenFan」の風との最大の相違点は、直線的に進んで肌を刺す(えぐる)ように人間にぶつかる、独特の「渦成分」の有無。「GreenFan」の二重構造の羽根は、外と内二種類の羽根が作り出す速度の違う風の相互作用により、「渦成分」を消し去ります。
この「渦成分」をなくすための大きなヒントとなったのが、寺尾氏が出入りしていた町工場の職人さんたちの「生活の知恵」でした。職人さんたちは「こうすると風が優しくなるんだよ」と言って扇風機の風を壁に当て、風の「渦成分」を消し、「面で進む優しい風」に変換させていたのでした。
思い返せば、「半分、青い。」7月9日(月)の第85回放送で大納言店長・田辺一郎(嶋田久作)が扇風機を壁に当てる知恵を披露していましたね。