NHK連続テレビ小説「ひよっこ」第7週(5月15日~)に登場する歌曲「椰子の実(やしのみ)」についてまとめます。
この週のストーリーは、「椰子の実」の歌詞内容とリンクするように進んでいきそうです。
コーラス部が歌う「椰子の実」 歌詞は?
第7週のサブタイトルは、「椰子の実たちの夢」。
向島電機での新生活にも慣れ、楽しい日々を送っていたみね子(有村架純)ら新入社員たちでしたが、5月に入りコーラス部で課題曲「椰子の実」を歌ったことをキッカケにして(?)次第に五月病、さらにはホームシックを発症してしまいます。
問題の曲、「椰子の実」の歌詞は以下の通り。(※この歌詞はすでに著作権が消失しています。)
【椰子の実】
名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の 岸を離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月旧(もと)の樹は 生いや茂れる
枝はなお 影をやなせる
われもまた 渚を枕
孤身(ひとりみ)の 浮寝(うきね)の旅ぞ実をとりて 胸にあつれば
新(あらた)なり 流離(りゅうり)の憂
海の日の 沈むを見れば
激(たぎ)り落つ 異郷の涙思いやる 八重の潮々
いずれの日にか 国に帰らん
「椰子の実」は、詩人で小説家の島崎藤村(1872-1943年)が書いた詩で、1901年(明治34年)刊行の詩集「梅落集」に収録されています。
愛知県渥美半島・伊良湖岬に流れ着いた椰子の実の話を民族学者の柳田國男から聞いた藤村は、この話に深く感動。故郷を離れた人の切ない心情を「椰子の実」の情景に託し、詩を完成させています。
▼愛知県の渥美半島、知多半島、それに対岸の伊勢志摩一帯は美しい海が広がる、とても風光明媚な場所。柳田國男はこの美しい地で見た椰子の実に、心を動かされたのでしょう。
歌曲としての「椰子の実」は、1936年(昭和11年)に日本放送協会(NHK)のラジオ番組「国民歌謡」が主導し「椰子の実」にメロディがつけられ(作曲は「牡蠣の殻」などで知られる大中寅二)、流行歌手・東海林(しょうじ)太郎が歌い、放送されたのが最初とされます。
「椰子の実」はヒット曲となり、第二次大戦中には戦地の将兵に向け放送されて心を慰めるなど、以降、広く日本人に愛される曲になっています。
「ひよっこ」第7週では、青天目澄子(松本穂香)のホームシック騒動、助川時子(佐久間由衣)のオーディション試練など、楽しいことが多かった寮生活の中に、少しだけ「五月病」的な暗雲が立ちこめて来ます。
仲間たちと助け合い懸命に日々を生きる少女たちですが、その心の奥底には故郷への断ち切れない想いが燻っていることでしょう。「いずれの日にか 国に帰らん…」。軽々しく口に出しては言えない想いが、「椰子の実」を歌ったことをキッカケにして、溢れ出てくることになります。
【追記】2022年放送の朝ドラ「ちむどんどん」でも、比嘉家の三女・歌子(上白石萌歌)がたびたび「椰子の実」を歌うシーンが登場しています。
▼未来へと歌い継がれるスタンダード楽曲を薬師丸ひろ子が自らセレクトしたカバーアルバム「時の扉」。「椰子の実」のほか、「故郷」「浜辺の歌」「冬の星座」、そして「セーラー服と機関銃」などが収録され、高い評価を獲得している作品。