TBS日曜ドラマ「陸王」に登場する特殊素材「シルクレイ」についてまとめます。
「シルクレイ」は、新しいマラソン用シューズ「陸王」を開発する足袋業者「こはぜ屋」にとって欠かせない、重要な素材となっていきます。
零細企業「飯山産業」の素材「シルクレイ」
マラソン足袋「陸王」の開発を進めるこはぜ屋。生ゴムを使ったソールは軽くて地面をつかむ感覚に優れるものの、強度等に問題があり、まだまだ完成には遠い状態にありました。
そんな折、前橋支店へと左遷になった埼玉中央銀行の坂本(風間俊介)が顧客資料の中から偶然見つけ出したのが、零細企業「飯山産業」が開発した特殊素材「シルクレイ」でした。
(※9月7日追記:原作では「シルクール」社として登場していましたが、テレビドラマ版では「飯山産業」として登場します。)
原作によれば、飯山晴之(寺尾聰)は家業のインテリア業を継いだものの、ひと山当てようと地元・群馬の「くず繭」を利用した特殊素材「シルクレイ」の開発に没頭。飯山はこの事業に熱中するあまり家業を傾かせ、ついには破産に至ってしまいます。そして迷惑をかけた人々から逃れるように、どこかへと雲隠れをしてしまったのです。
すべてを失った飯山の手元に残ったのは、「死蔵特許」となった繭の特殊加工技術とその製造ノウハウのみ。
飯山が家業を傾けてまで開発した特許素材「シルクレイ」は、結局日の目を見ることなく闇へと消え去ろうとしていたのでした。
※この記事は原作を参考に書かれています。ドラマ版では設定の変更があるかも知れませんので、相違点があれば追記します。
「シルクレイ」の意味とは?軽い、強い、安い
「シルクレイ」は、物語上のフィクションの素材と考えられます。その呼称は「絹(シルク)」と「粘土(クレイ)」を掛け合わせた造語で、開発者の飯山によって命名されています。
※「新・繊維総合辞典」(繊維新聞社)、「新版・ファッション/アパレル辞典」といった素材辞典、グーグル検索等でも「シルクレイ」という繭の素材はヒットしませんので、物語上のフィクションの素材と考えて良さそうです。もしモデル素材がありましたら、追記・訂正します。
ドラマ版「陸王」の第1話では、坂本が見つけ出してきたシルクレイの資料の中に、その特性が記された一枚の紙が。以下、その内容を引用、書き出しをしてみます。
シルクレイは、弊社の持つ独自技術で繭を特殊加工した素材です。
シルクレイの特徴は
1.繭を使用した天然素材…蚕由来の繭だけの天然素材で構成。タンパク質100%なので、人肌・自然に優しい。生体親和性・安全性が非常に高い。
2.独特の弾力・強度を持つ…生体由来のコラーゲンが利用されているため強度・弾性率や滅菌方法等に課題がある。
3.シルクプロフィン多孔質体の可能性…強度・弾力性・軽さなど、孔数を変化させることで様々な分野に応用が可能な新素材となり得る。
特許名称:シルクレイ
登録番号:特許第3274415号
発明者:飯山晴之(株飯山産業社長)
原作によれば「シルクレイ」は、見た目はゴムっぽく適度な弾力と硬さもあるのですが、天然素材の繭の特性を活かした強靭さを持ち、かつ軽く環境にも優しく、造形も容易で、くず繭を使うため製造コストも安い…。
怪我に悩むランナーに向け理想のシューズを開発しているこはぜ屋にとって、思わず飛びつきたくなる、大きな可能性を秘めた素材なのです。
とはいえ、辛酸をなめてきた飯山は、人生最後の手札となる「シルクレイ」の権利をそう簡単にこはぜ屋に手渡すわけもなく…。