2002年に初回放送が行われ、2023年9月からアンコール放送(全話再放送)が行われているNHK連続テレビ小説「さくら」。
ヒロイン・さくらの母方の祖父が営む東京都江戸川区の「神山養魚場」のシーンが撮影された場所についてまとめます。初回放送から21年が経ち、その風景もだいぶ変わっています。※この記事は2023年に書いています。
さくらの祖父が営む金魚養殖場「神山養魚場」
ハワイ生まれの日系4世であるヒロインのエリザベス・さくら・松下(高野志穂)は、ハワイ大学大学院に在学中にALT(外国語青年招致事業)により来日。
東京都江戸川区にある母方の祖父母の家・神山家にお世話になりながら、東京の「あけぼの中学校」の英語指導助手として働く予定でした。
※さくらは諸事情(岐阜出身の父方の祖母・淑子の元カレがあけぼの中学校の理事長だった!)により急遽岐阜の「あけぼの中学校・飛騨高山分校」へと赴任が決定しています(第5話)。
さくらの母方のグランパ・神山功(小林亜星)は、東京都江戸川区にある昔ながらの金魚養殖場・神山養魚場で場長をしています(設定上の住所は東京都江戸川区上堀川町1-3-12。実在しない架空の住所です)。
昭和の化石のような頑固ジジイであるグランパ・功が金魚の世話をするシーンなどは、以下の実在の養魚場で撮影が行われています。
ロケ地は金原長太郎商店(葛飾区)、堀口養魚場(江戸川区)
「神山養魚場」のシーン(外観、エントランス、養魚池など)の撮影は以下の2ヶ所で行われているようです。
・「金原長太郎商店」(東京都葛飾区西新小岩4-39-12)…すでに廃業
・「堀口養魚場」(東京都江戸川区春江町5-25)…令和現在も営業中
ロケ地①金原長太郎商店(東京都葛飾区)…エントランス、外構部など
「神山養魚場」のエントランス部分や、たびたびさくらが歩く「神山養魚場」の看板が掲げられた敷地外縁のフェンスがある場所などは、今は廃業してしまった金魚店「金原長太郎商店」(東京都葛飾区西新小岩4-39-12)で撮影されていたようです。
▼2009年当時のグーグルストリートビューで見る「金原長太郎商店」。このフェンスの角をさくらが歩くシーンが度々登場しています。背景の木造家屋や団地もドラマの風景と完全一致(第4話など)。
▼「神山養魚場」のエントランスを撮影した場所。初めて東京に来たさくらはここから神山養魚場の前庭へと突入し、「ワーオ!ゴールドフィッシュ!」と感激しています(第4話)。2009年の時点ですでに看板だけを残して養魚場本体はなくなり、駐車場となっています。2023年現在も「S-1駐車場」として変わらず。
▼「神山養魚場」のエントランス部の背後に映り込んでいた茶色いマンション。「Hair salon Suga」の看板がドラマにも映り込んでいます(第4話、第5話など)。
ロケ地②堀口養魚場(東京都江戸川区)…養魚池、作業場
場長の神山功や、従業員の川口良彦(新井康弘)らが実際に作業をする養魚池のシーン(バックヤード)の撮影は、令和現在も現役の養魚場として生き続ける「堀口養魚場」(東京都江戸川区春江町5-25)で行われたようです。
▼ちょっとわかりづらいですが、この養魚池周辺で在りし日の小林亜星がブツクサと悪態をつきながら金魚の世話をしています。さくらとグランパの初対面の地ですね。都会のど真ん中に残された、江戸の金魚の名残の空間。
(おまけ)あけぼの中学校・東京本校のロケ地=三田国際学園
さくらが当初働く予定だった東京の私立中学校・あけぼの中学校(東京本校)の校舎外観。
撮影は東京都世田谷区用賀2丁目16-1の「三田国際学園中学校・高等学校」で行われています。
「金魚三大産地」だった江戸川区 江戸時代の金魚愛好文化を受け継ぐ
ドラマの舞台となっている江戸川区は、江戸の金魚愛好文化を今に伝える「金魚三大産地」として知られました。
江戸の金魚養殖は、元禄年間(1688~1704年)に東京・上野の不忍池付近で始まり、入谷や根津などでも盛んに行われたそう。
明治時代になるとその中心地は東の本所・深川近辺、後に亀戸方面などに移っていましたが、さらに大正へと時代が下ると、養殖業者がより広い土地を求めて東の郊外・江戸川区一帯に養殖場を開いたそうです。1954年の最盛期には都内の金魚の養殖業者の3分の2にあたる20軒が江戸川区に集まり、愛知県弥富市、奈良県大和郡山市と並び「金魚三大産地」と呼ばれたとか。
しかし、昭和の高度経済成長期に江戸川区が急激な都市化に見舞われると、古くからの金魚養殖業者も激減。令和現在、江戸川区内には「堀内養魚場」「佐々木養魚場」を残すのみとなっています。
特にお隣葛飾区の「金原長太郎商店」は今や現存しない養魚施設であり、「さくら」のロケシーンは貴重な映像となっています。