NHK大河ドラマ「真田丸」第12話(2016年3月27日放送)では、鉄火起請(てっかきしょう、てっかぎしょう)という珍しい “神判” が行なわれようとする場面があります。
この記事では「鉄火起請」の意味と、第12話で描かれるエピソードの概要などをまとめます。
漁師の揉め事 「鉄火起請」で決着を?
真田が上杉景勝(遠藤憲一)の家臣になることが決まると、信繁(堺雅人)は上杉家に人質に出されることになり、春日山城(現在の新潟県上越市)へと向かいます。
ある日、信繁は景勝とともに浜へと出ると、漁師の治兵衛と又吉が揉めている姿を目撃します。治兵衛と又吉はそれぞれ北浜と南浜の漁師で、以前にも穫った魚を巡って揉め事になり、景勝のもとに相談に来ていました。
治兵衛らによれば、どうにも収拾がつかない揉め事を解決するために、この場で「鉄火起請(てっかきしょう)」を行い、「神の判断」を仰ごうとしているとのことです。
争いごとの解決手段「鉄火起請」
「鉄火起請」(=火起請「ひぎしょう」とも言う)は、中世日本で行なわれていた神判(神が判断を下す裁判)で、特に戦国時代の一時期(1580〜1610年頃)に行なわれていたという記録が残っています。
その多くは田畑や海、山林などの領有、境界線を争う際に行なわれました。
超危険!鉄火起請のやり方
「鉄火起請」は、身体的に大変な危険を伴うものでした。
まず、争い事を起こした集団(村同士など)の中からそれぞれ代表者が選ばれます。その代表者は肉食を断ち身を清めた上で、立ち会いの役人のもと、焼けた鉄を掌に乗せて指定の場所(少し離れた神前の三宝)まで運んで載せるという「チャレンジ」を行ないます。
「神の判断」は以下の通りになります。
①指定場所に見事に載せられた方の主張が認められる
②両者とも載せられなければ、より神前に近い場所まで運んだ側の主張が認められる
③それでも決着がつかなければ、より火傷の状態がヒドい方が負け
この神判によって「敗者」になった代表者は、神を欺いたとして引回しや斬首に処されたとされ、例え「勝者」になったとしても身体に深刻なダメージ、後遺症を負うことになります。代表者ならびに家族は、その集団によってその後の生活が手厚く保護されたとのことです。
なお、鉄ではなく熱湯を使用する「湯起請(ゆぎしょう)」という同様の神判も存在し、こちらは手に入りにくかった鉄を使用しないことからも、古くからの事例が残されているようです。
信繁の機転、小道具へのこだわりが見どころ
話を「真田丸」に戻します。
前述したように「鉄火起請」は大変な危険と代償を伴うものであり、この場に居合わせた信繁は、とある「トンチ」を利かせてこの危険な神判が行なわれることを回避させます。
「真田丸」では毎回、昌幸を中心にして「騙し合い」「機転」が見どころとなっていますが、今回は信繁の頭の回転の良さが発揮される回となりそうです。
上杉景勝は信繁の機転を高く評価し、ますます信繁のことが「お気に入り」になっていきます。
「鉄火起請」は、過去にNHKの歴史バラエティ番組「タイムスクープハンター」でとりあげられましたが、ドラマに登場するのは初めてとのこと。時代考証担当、それに現場スタッフの連携による小道具、所作などへの「こだわり」が感じられる場面となりそうです。