NHK連続テレビ小説「虎に翼」でヒロインの寅子たちの憩いの場となっていく甘味処「竹もと」。
店内のシーンはスタジオセットでの撮影となりますが、セットデザインのモデルとなっている実在の店舗(現存)や、ヒロインのモデル人物・三淵嘉子さんが実際に愛した甘味処(現存)などがありますのでご紹介します。
【虎に翼】甘味処・竹もと(後の笹竹) 甘党の桂場と遭遇も
甘味処「竹もと」(後に閉店した笹寿司の名も残した「笹竹」に改名)は、寅子(伊藤沙莉)が通う女学校の近くのお茶の水にあるという設定。後に寅子が進学することになる明律大学(明治大学がモデル)の校舎からもほど近い場所にあります。
寅子のモデルである三淵嘉子さんは文京区大塚にある「東京女子高等師範学校附属高等女学校」(現在のお茶の水女子大学附属高等学校)に通っていました。
「竹もと」は、勉学に忙しい寅子や明律大学の学生たちにとってホッと出来る憩いの場所です。名物のあんみつやお団子など、当時の若い人たちが楽しんでいたスイーツの数々がメニューに並びます。
何かと寅子とぶつかる堅物の裁判官・桂場等一郎(松山ケンイチ)も実は大の甘党で「竹もと」に足繁く通っているらしく、寅子と桂場が「竹もと」でバトルする様子も描かれそうです。
この「竹もと」の店舗外観は、茨城県つくばみらい市にある商用撮影施設「ワープステーション江戸」のオープンセットで撮影されています。また、店舗の内部はスタジオセット(NHKの屋内スタジオ)での撮影ですが、その内装デザインは神田にある実在の甘味処「竹むら」(後述)がモデルになっているようです。
これとは別に、寅子のモデル・三淵嘉子さんが学生時代に友人たちと足繁く通った老舗甘味処(銀座若松)がありますので、あわせてまとめておきます。
【モデル①】外観と内装デザイン、店舗セットのモデルは神田「竹むら」 最終回ロケ地にも
「竹もと」店内のスタジオセットのデザインは、JR御茶ノ水駅、神田駅の近くにある老舗甘味処「竹むら」(東京都千代田区神田須田町1丁目)がモデルになっているようです。
1930年(昭和5年)に創業した歴史ある「竹むら」。創業当時、周囲に本格的な汁粉屋がなかったことから、ハイレベルな汁粉屋を目指して開業したそうです。
現在も北海道産小豆を原料に自家製餡を使用しており、あんみつ、栗ぜんざい、揚げまんじゅうなども人気。食通で知られた作家の池波正太郎も足繁く通った名店です。
【追記】9月27日(金)放送の最終回では、「竹もと」改め「笹竹」の平成時代の姿が登場。実在する令和現在の「竹むら」の建物がロケ地として使用されました。
▼入母屋造りの木造3階建ての「竹むら」の建物。欄干部分には当時の職人の手による細かな装飾(竹と梅の模様)が施され、軒下には木製の美しい吊り行灯(あんどん)が見られます。「竹むら」は近隣の「いせ源(あんこう鍋)」「まつや(蕎麦)」「ぼたん(鶏料理)」などとともに奇跡的に戦災から焼け残り、今も創業当時の古き良き姿を残しています。
「虎に翼」の第1週の時代設定(寅子の女学生時代)は1931年(昭和6年)。
劇中に登場する「竹もと」はまさに昭和初期の甘味処の雰囲気を再現したものであり、その内装や外観などは現在も残る神田「竹むら」の店舗デザインとそっくりです。
神田「竹むら」は三淵嘉子さんが通った明治大学のキャンパス(神田猿楽町付近)からもほど近く、実際に三淵嘉子さんも通った可能性があります。
【モデル②】あんみつ発祥の老舗「銀座若松」 三淵嘉子さんが愛した名店
あんみつ発祥の銀座若松の抹茶あんみつ
— ムッシュサトウ (@sugar_parisJPN) April 4, 2020
昭和5年に生まれて以来味の変わらないあんみつは疲れた身体に染み渡る美味しさ!コクのある黒蜜をたっぷりかけてもさっぱりと頂ける計算された味 寒天のヘルシーさもありボリュームたっぷりなのに罪悪感のない極上のおやつ pic.twitter.com/B3wJTsljNb
ヒロイン寅子のモデルである日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんは、明治大学専門部女子部法科、明治大学法学部に進学すると、そこで出会った女子の親友たちとたびたび甘味処に通ったそうです。
伝記的小説「裁判官 三淵嘉子の生涯」(潮出版社)には、女子部時代からの親友である明治大学法学部の仲良し4人組(嘉子、小夜子、文枝、真知)が放課後に甘味処「銀座若松」(東京都中央区銀座5丁目)に通う様子が描かれています。こうしたエピソードが、「虎に翼」に登場する学生のたまり場・甘味処「竹もと」のイメージと重なります。
三淵嘉子さんは「銀座若松」が発祥とされるあんみつが大好物だったそうで(みつ豆も汁粉も好きだった)、大学時代にこの店の存在を知ってから体重が増加してしまったと小説には書かれています。仲良し4人組は足繁く「銀座若松」まで足を伸ばし、おしゃべりに花を咲かせ、青春時代を楽しんだようです。
「銀座若松」は1894年(明治27年)に銀座で最初の汁粉屋として開業した歴史ある甘味処です。
三淵嘉子さんが愛したあんみつは、1930年(昭和5年)に2代目の森半次郎が「もっと甘いものが食べたい」という常連客の要望を受けて生み出したものだとか。
明治の学生(専門部、法学部)だった三淵さんが友人たちと「銀座若松」に通っていたのが1932年(昭和7年)〜1938年(昭和13年)前後ですから、三淵さんはまさに誕生したばかりの最先端のスイーツ「あんみつ」を楽しんでいたわけです。
現在も創業時と同じ場所で営業を続けている「銀座若松」。建物こそ現代的なビルの中に入っていますが、三淵嘉子さんが愛した味が今に受け継がれています。
▼史実を参考に書かれている伝記的小説「裁判官 三淵嘉子の生涯」。多少の脚色はありそうですが、三淵さんの青春時代の様子、当時の女性が弁護士を目指すことの大変さなどが生き生きと描かれています。結婚相手との馴れ初めなども書かれており、ドラマの参考になりそう。