2016年の春に放送されたNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」は、激動の昭和の時代に生きた架空の女性・小橋常子(こはし・つねこ)が主人公。
一世を風靡した生活総合誌「暮しの手帖」の創業者・大橋鎭子氏らの軌跡をモチーフにしたフィクションの作品です。
「とと姉ちゃん」あらすじ 静岡と東京が舞台!
1932年(昭和7年)。静岡県遠州で生まれ育った主人公・小橋常子(高畑充希)は11歳にして父・竹蔵(西島秀俊)を結核で亡くします。残されたのは母・君子(木村多江)と二人の妹・鞠子(相楽樹)、美子(杉咲花)。竹蔵の遺言により、長女の常子は一家の「父(とと)代わり」となり、一家を支えることになります。※三姉妹の配役は大人になってからのものです。
やがて一家は母方の祖母・滝子(大地真央)を頼って東京・深川に上京。当初は一家に冷たく接する祖母も、やがて常子らに深い愛情を注ぐようになり、戦前戦中の激動の時代を生き抜きます。
戦後、雑誌「あなたの暮し」を創刊
「とと姉ちゃん」の物語のハイライトは、東京が焼け野原となった戦後から。常子の人生は、「暮しの手帖」の創業者である大橋鎭子(おおはししずこ)氏の足跡をモチーフとして描かれていきます。
女学校を卒業後に小さな新聞社に入社し、編集作業を学んでいた常子。戦後、一面の焼け野原となってしまった東京を見て「これからの世の中は女の人たちが幸せにならなければいけない」と痛切に感じた常子は、女性のための雑誌をつくろうと決意。家族で小さな出版社を立ち上げます。
生前の父が教えてくれた「当たり前の暮らしの大切さ」を胸に、「素人商売」で始める三姉妹の女性向け雑誌づくり。当初は失敗や頓挫を繰り返しますが、天才編集者・花山伊佐次(唐沢寿明)との出会いもあり、やがて三姉妹がつくる雑誌「あなたの暮し」は戦後を生きる女性たちの「生活の道しるべ」になっていきます。
「暮しの手帖」創業者・大橋鎮子氏がモデル
「とと姉ちゃん」ことヒロインの小橋常子は、実在の人物である「暮しの手帖」創業者・大橋鎭子氏がモデルとなっています。
大橋鎭子氏は小学5年生の時に父を肺結核で亡くし、東京府立第六高等女学校を卒業後、日本興業銀行に三年勤めています。その後日本女子大学に入学するものの肺結核となり一年で学業を断念。静養の後、日本読書新聞に入社し、編集部に所属します。この日本読書新聞にて、長きに渡る仕事のパートナーとなる花森安治氏と出会い、後に共に「暮しの手帖」を創刊することになります。
鎭子氏の二人の妹・晴子氏、芳子氏も「暮しの手帖」創業メンバーとして参加しており、このあたりが「とと姉ちゃん」の家族描写のモチーフとなっているようです。
天才編集者・花山伊佐次は花森安治氏がモデル
唐沢寿明が演じる天才編集者・花山伊佐次は「暮しの手帖」創業者、初代名物編集長として知られる花森安治氏がモデルになっています。
鋭い言論と反骨精神、徹底した美意識に基づいた花森安治氏の誌面づくりは、「暮しの手帖」の思想の根底を支えました。外部からの広告を受けず商業主義に左右されない記事づくりを貫いたその姿勢は、常に生活者本位であり続けました。
大橋鎭子氏は自身の著書で花森氏のことを「ほんとうにおっかなくて、でもとても痛快な人でもあります」と評しており(花森氏は鎭子氏の9歳上)、「とと姉ちゃん」で描かれる常子、伊佐次の関係も楽しみです。
史実を大胆に再構成した「フィクション」
NHKの発表によれば「とと姉ちゃん」は、
実在の雑誌群や、人物などをモチーフとしていますが、戦前戦後の昭和史を大いなる愛をもって生きていくある家族の物語として大胆に再構成し、登場人物や団体は改称し、フィクションとしてお届けします。
とのこと。朝ドラらしい人情喜劇を描きながら、「日常の生活の大切さ」に寄り添い、力強く戦後を生きた女性像を描いてくれるのではないでしょうか。
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