【わろてんか】「パーマの機械(電髪)」元ネタ 横山エンタツの失敗ビジネスがモデル

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NHK連続テレビ小説「わろてんか」に登場する「パーマ機(電気式髪結い機、電髪)」のエピソードについてまとめます。

このエピソードはキースのモデル人物・横山エンタツが「パーマの機械」のビジネスを手がけたことがモチーフとなっています。ただし、史実からは状況、時系列などが改変されていますので、相違点をあわせてまとめます。

キースの儲け話「パーマ機」 藤吉は…

苦しい北村屋の経営をなんとか立て直そうと焦る藤吉(松坂桃李)は、トラブルメーカー・キース(大野拓朗)が持ってきた英国からの輸入品「パーマの機械(電髪)」の儲け話に乗っかります。

藤吉は半信半疑ながらも周囲におされ、北村屋の土地を担保に借金をしてまでパーマの機械を購入することになりますが、いざ試してみると、これがとんだ不良品。

結局、藤吉のもとに大きな借金が残ることとなり、北村屋はいよいよピンチを迎えてしまいます。

エンタツのビジネス「パーマネントウェーブの機械」

第5週で描かれるこのパーマ機の失敗エピソードですが、キースのモデル人物・横山エンタツが実際に手がけたビジネスの逸話がモチーフとなっています。

「わが心の自叙伝 三」(神戸新聞社学芸部編)に掲載されている横山エンタツ本人の文章に、パーマ機ビジネスに関する記述がありますので、参考にして書きます。

▼今となっては貴重な、エンタツ本人の文章を収録(第三巻)。希少な本なので、僕は国会図書館まで読みにいきました…。

芸人としてアメリカ巡業へ

すでに大正末期に、東京で万歳師としてある程度の成功を収めていたエンタツ。

エンタツは昭和4年(1929年)にハワイのマネージャー・滝沢なる人物からの誘いを受けると、漫才師や浪曲師ら総勢10名ほどを連れてハワイ、アメリカ本土への海外巡業を敢行しています。

本人いわく、アメリカ巡業は「シカゴ付近を回って成績は上々」「旅費のあるうちに帰ろうやないかと 今度は堂々と客船で帰国」したとのことで(※)、エンタツは異国の地で大きな刺激を受けつつ、無事に帰国を果たしています。

(※相方・花菱アチャコの著書「遊芸稼人」には、このアメリカ巡業は失敗に終わり、エンタツは自信を失って万歳から足を洗おうとしたと書かれています)

▼こちらはアチャコ氏1970年の著書。理路整然とした落ち着いた文体に触れ、アチャコのイメージがちょっと変わりました。

帰国後、ビジネスの道へ

帰国後のエンタツは、「ええかげんに真面目な商売やったらどないや」という周囲の圧力もあり、住んでいた大阪玉造の長屋の土間に機械を据え付け、巡業先のアメリカで大流行していた「パーマネントウェーブの機械」をつくり始めます。

エンタツいわく、このパーマ機は「ハサミの出来損ないのような形をした」もので、「今みたいに精巧なヤツではない」とのこと。

実用新案登録を申請し、材料を揃え、バネづくり職人を探し、メッキ屋に綺麗に仕上げてもらい…。エンタツは持ち前の行動力、機動力をすかさず発揮して製品を揃えると、儲ける気満々でこれを売りに出すのですが、なぜかさっぱり売れませんでした。

エンタツいわく、当時の日本の女性たちにはパーマをかけるという習慣が定着しておらず、そもそもの需要がなかったとのこと。

懲りないエンタツはその後もアメリカで見た「買い物用の紙袋」を売り出すビジネスを始めますが、これもまったく世間に相手にされません。

だいぶドラマとは違いますね…

以上、読んでいただけるとわかると思いますが、

・そもそもエンタツ(キースのモデル)が吉本吉兵衛(藤吉のモデル)に儲け話を持ち込んだわけではない。それ以前に、エンタツと吉兵衛は幼馴染みではない
・当然、これが原因で吉本家の家業(荒物問屋・箸吉。北村屋のモデル)が傾いたわけでもない
・パーマ機ビジネスを手がけた時期も違う(ドラマでは明治末期の話だが、史実では昭和初期の話)

といった点からも、「わろてんか」のパーマ機のエピソードは、大部分が創作されたストーリーといえます。

ビジネスセンスがなかった?エンタツ

日本でパーマネントウェーブ(電髪)が営業に取り入れられたのは昭和5~6年頃、それが本格的に流行の兆しを見せるのは昭和10年代になってからのこと。「買い物用の紙袋」といい「パーマ機」といい、世界を知る破天荒な男・エンタツの思考は、世間の流行よりもいささか先へ進みすぎていたのかも知れません。

エンタツはこの停滞期の後に吉本から誘われると、アチャコとコンビを組むことを条件に吉本入りをしています。ビジネスに失敗したことが結果的に伝説のコンビ結成へと繋がっていくわけですから、人生というのは面白いものです。

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