NHK連続テレビ小説「エール」第108回(11月11日)に登場したラジオドラマの主題歌「さくらんぼ大将」についてまとめます。
「さくらんぼ大将」は福島・飯坂温泉などを舞台とした人気ラジオドラマでした。
【エール】典男の子どもたちが歌った「さくらんぼ大将」主題歌
数十年ぶりに再会した鉄男の弟・典男一家を招き、にぎやかな晩餐となった古山家。
典男(泉澤祐希)の子どもたちは裕一と池田二郎が手掛けた人気ラジオドラマ「さくらんぼ大将」を毎回楽しみに聞いているらしく、裕一が「さくらんぼ大将」主題歌の作曲者だと知ると大はしゃぎし、「♪さーくらんぼ かーくれんぼ」と縁側で歌い始めます。
典男もドラマの主人公である孤児・六郎太に自分を重ね合わせ、熱心に聞いているとのこと。裕一は自分の手掛けた作品が広く愛されていることを実感し、幸せな気持ちになります。
【史実】「鐘の鳴る丘」の後継番組「さくらんぼ大将」
「さくらんぼ大将」は、実在のラジオドラマとその主題歌です。
「エール」でも登場していた、戦災孤児をテーマとした戦後の大ヒットラジオ番組「鐘の鳴る丘」(1947年〜)。主題歌「とんがり帽子」が大ヒットするなど社会現象ともなった「鐘の鳴る丘」の放送が終了すると、後番組として始まったのが「さくらんぼ大将」(1951年〜1952年)でした。
この「さくらんぼ大将」も、「鐘の鳴る丘」と同じ古関裕而(音楽)、菊田一夫(作家)のゴールデンコンビによる連続ラジオドラマ。「エール」に登場している古山裕一、池田二郎(北村有起哉)コンビのモデルとなった二人ですね。
【史実】福島の山村が舞台 涙と笑いの物語
「さくらんぼ大将」は、戦災孤児を扱った社会派ドラマ「鐘の鳴る丘」とはうって変わり、涙と笑いのエンターテイメント作品となっています。
ストーリーは、福島の山奥で医者をしている男・大野木蛮洋(古川ロッパ)が、孤児である六郎太を連れて各地へ旅に出るというお話。二人は薬を売りながら旅を続けるのですが、その旅先で繰り広げられる失敗やお手柄が笑いと涙でつづられるというロードムービー的な要素があり、またたく間に大人気となりました。
【史実】疎開先だった飯坂温泉、茂庭の風景が作曲モチーフに
主題歌「さくらんぼ大将」(作詞・菊田一夫、歌・川田孝子)を担当した古関裕而は、ドラマの原作者・菊田一夫から「田舎の僻地に住む少年を主人公にして、ユーモアある物語を作りたい」という話を受けると、真っ先に疎開先だった福島・飯坂温泉とその奥地、茂庭の風景を思い浮かべたそうです。
この地域一帯はさくらんぼの名産地だそうで、古関裕而は当時の光景を思い出しながら、明るく健康的なマーチを作曲。主題歌「さくらんぼ大将」は福島の素朴な自然の美しさ、さくらんぼが香るような爽やかな空気感をもった楽しい楽曲に仕上がっています。
放送から半年後にはドラマの舞台となった飯坂温泉から招待を受け、古関裕而、菊田一夫、古川ロッパら関係者一行が現地を訪れています。古関裕而は愛する故郷の人々に喜んでもらえる作品を作れたことを大変に喜んだようです。