NHK連続テレビ小説「マッサン」に登場する鴨居商店の「太陽ワイン」は「赤玉ポートワイン」がモデルになっているようです。
明治40年(1907年)、寿屋洋酒店(現・サントリー)から発売され大ヒットした甘味果実酒「赤玉ポートワイン」。この商品により、日本人の間に「ポートワイン」という名称は広く認知されました。
しかし、この「赤玉ポートワイン」はあくまで「ポートワイン風」の甘い味付けが施された葡萄酒であり、本物の「ポートワイン」ではありません。
この記事では「ポートワイン」とは一体何なのか、「赤玉ポートワイン」との製法の違いなどをまとめてみます。
ポルトガルの「酒精強化ワイン」
ポートワインは英語で「Port Wine」。原産地・ポルトガルでは「ヴィーニョ・ド・ポルト(vinho do Porto)」と呼ばれます。ポルトガル北西部ドウロ河上流域で栽培された葡萄を原料とした「酒精強化(しゅせいきょうか)ワイン」です。
「ポートワイン」は、「シェリー酒」「マデイラワイン」とともに、世界三大酒精強化ワインと呼ばれています。
「酒精強化ワイン」。またまた聞き慣れない言葉が出てきました。
「酒精」はアルコールのことで、「酒精強化ワイン」とは、発酵途中の段階でアルコール(酒精)を加えることで、アルコール度数を高めたワインのことです。
醸造酒のアルコール度数には上限が
そもそも、自然の状態で発酵した飲物は16度以上のアルコール度数に達することができません。アルコール度数が16度を超えると、糖分の発酵を推し進める「酵母菌」に対して生成されたアルコール自体が殺菌作用を働かせる(発酵<殺菌になる)ため、発酵が止まってしまうのです。
このため、必然的に醸造酒(ビール、ワイン、日本酒など)はアルコール度数が低くなります。
より高いアルコール度数を得るためには、アルコール度数を人為的に高める「蒸溜」という作業が必要になります。こうした過程を経て生成されたお酒が「蒸留酒」(ウイスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカなど)です。
ポートワインの製法とは?
さて、そんな豆知識を確認した所で。
「ポートワイン」は葡萄を発酵させる途中、まだ発酵するべき糖が残っている段階で、アルコール度数70度以上のブランデーを注ぎ込み、酵母の働きを人為的に止めてしまいます。
これにより出来上がったワインには糖分が残り、独特の甘味とコクが生じます。また、投入されたブランデーにより高いアルコール度数(20度前後)が実現するため、保存性に優れた飲料となるのです。
「赤玉ポートワイン」のつくりかた
寿屋洋酒店(現・サントリー)の鳥井信治郎によって世に出された「赤玉ポートワイン」は、輸入したスペイン産の葡萄酒(すでに発酵済)にアルコール、香料、甘味料を添加し、風味を調製したものでした。
いわば「ポートワイン風葡萄酒」といったところですが、当時、ワインの味に慣れていなかった日本人には甘くて飲みやすい「赤玉ポートワイン」は大ウケ。見事、大ヒット商品となったのです。
その後、「赤玉ポートワイン」は商標の関係もあり「赤玉スイートワイン」に名称が変更され、現在でも人気の商品となっています。