NHK連続テレビ小説「マッサン」より。マッサンこと亀山政春(玉山鉄二)は、大阪の鴨居商店を退職後、北海道・余市に渡り独立。理想のウイスキーづくりに邁進します。
今でこそ「余市と言えばウイスキー」というイメージが成立していますが、当時(昭和9年)の余市はニシン漁とリンゴが特産の小さな町。工場建設地となった駅前近辺は、商人宿と雑貨屋があるくらいで人家も見当たらないような場所だったそうです。
この記事では、マッサンが北海道の数多の土地から余市を選んだ理由をまとめます。記事の後半では、史実の竹鶴政孝が余市を工場建設地に選んだ理由もまとめます。
ドラマ:マッサン、森野熊虎に導かれ余市へ
鴨居欣次郎(堤真一)との対立から営業職に回されてしまったマッサン。営業職として新しい顧客獲得のために訪れた北海道・小樽で、森野熊虎(風間杜夫)という豪快な男に出会います。
熊虎は余市を本拠としているニシン漁師の網元。マッサンは熊虎に言われるがままに余市へと連れられ、そこで清浄な空気と心地よい風景に出会います。余市の気候風土は、マッサンが理想として思い描くスコットランドに限りなく近いものだったのです。
やがて鴨居欣次郎と決別し独立を決意したマッサンは、迷うこと無く余市の地へと降り立ちます。マッサンは鴨居商店で国産第一号蒸溜所・山崎工場(大阪・京都府境)を建設する際にも、北海道を第一候補地に挙げていましたから、長年の念願が叶ったといったところでしょう。
史実:竹鶴政孝が余市を選んだ理由
史実の竹鶴政孝(ニッカウヰスキー創業者)は、勤めていた寿屋(現在のサントリー。ドラマの鴨居商店のモデル)を退職後、北海道に工場建設地探しの旅に出ています。
寿屋在職時代からコツコツと候補地を模索していた竹鶴。当初は江別を候補地と考えていましたが、石狩川が幾度か氾濫していることを知り、代替地として余市に目星をつけていました。
竹鶴は余市に降り立ち、この地に夢を賭けることを決断します。その根拠には、以下のような余市の好条件があったそうです。
・適度な寒冷地で、日本海からの湿気もあり、熟成に好条件
・余市川の豊富で清らかな水源
・ピート(泥炭)がたくさんとれる
・湿地であるため土地代が安い
・当時、不漁の年が頻発し地元ニシン漁師の収入が不安定となっており、労働力を安く確保できた
・リンゴの特産地(ウイスキー事業が軌道に乗るまで、リンゴジュースを売って資金を回す計画だった)
・目の前を通る鉄道により、原材料の調達がしやすい
高速輸送に適し、工場見学に多くの人が訪れることが出来るというマーケティング目線での条件を優先した寿屋・山崎蒸溜所とは違い、余市蒸溜所はウイスキー醸造の条件を最優先にした土地選定でした。工場建設地が決まり、マッサンの夢への挑戦がいよいよ始まります。
なお、竹鶴は余市蒸溜所建設にあたり酒造業を営む地主・但馬八十次から余市を紹介してもらい、土地を譲り受けています。ドラマで登場するニシン漁網元・森野熊虎(風間杜夫)は、この但馬八十次をある程度はイメージして創作された人物かも知れません。
▼ニッカウヰスキー北海道工場・余市蒸溜所は余市駅の目の前(駅と川にはさまれたグレーの一帯)。近くに余市川が流れ北に日本海が開ける絶好の土地で、工場敷地内にも水が入り込んでいる(湿地帯である)ことが見てとれる。
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