NHK連続テレビ小説「あさが来た」で、ヒロイン・今井あさ(波瑠)が嫁ぐのが、大坂の名門両替屋「加野屋」の次男・白岡新次郎(玉木宏)。大らかで道楽者ながら次第にあさの良きパートナーとなっていく新次郎には、実在のモデルが存在します。
この記事では、白岡新次郎のモデル・広岡信五郎についてまとめます。
浅子の夫・広岡信五郎 「加島屋」の道楽者
ヒロイン・あさのモデルとなっているのが、明治時代指折りの女性起業家として知られる広岡浅子。京都の豪商・油小路三井家に生まれた浅子は、家の決まりにより二歳にして大坂の名門両替商・加島屋(広岡家)に嫁ぐことが決まっていました。その相手が、玉木宏演じる白岡新次郎のモデルとなっている広岡信五郎です。
(※信五郎は本家の生まれですが、加島屋の有力分家・加島屋五兵衛に養子に出されています。)
ドラマでは「加野屋」として登場する両替屋「加島屋」は、大坂有数の豪商でした。その歴史ゆえか、何かと勘定がルーズで無駄の多い「加島屋」の現状に浅子は危機感を募らせていくのですが、夫の信五郎はいたってマイペース。謡曲や茶の湯など趣味三昧の生活を繰り返し、ビジネスにはまったく興味を示しません。
実業家・浅子の良き理解者
やがて明治維新期の混乱により、諸大名に貸し付けていた金銀の回収が不可能になるなど、加島屋の経営状態は厳しい状態に陥るのですが、ここで広岡家や夫に代わり、浅子が加島屋の立て直しに奔走することになります。
穏やかで優しい夫・信五郎は、「三従」(生家では父に従い、嫁しては夫に従い、夫の死後は子供に従え、という女性に対する教え)の考えがまだ色濃かった時代において浅子の才能を早くに認め、浅子の商いを支えていくことになります。
▲「あさが来た」原作「小説土佐堀川」。この記事は「小説土佐堀川」を参考に書かれています。
やがて信五郎も実業家に
また、信五郎がのめりこんでいた「謡曲遊び」も、加島屋再興に大きな役割を果たすことになります。時代の変化により両替商という商いに限界を感じていた浅子は、信五郎が謡曲仲間から聞いた「炭鉱」という新しい商いに興味を示すことになります。浅子の決断によりこの炭鉱業に乗り出したことが、加島屋のターニングポイントとなります。
当初は遊びにウツツを抜かしていた信五郎ですが、やがて謡曲仲間たちと「尼崎紡績(のちのユニチカ。ドラマでは阪神紡績として登場)」を立ち上げ、次第に実業家としての才能を見せるようになります。信五郎は尼崎紡績の初代社長に就いたほか、加島銀行の二代目頭取、大同生命副社長を務めるなど、大阪の実業界で厚い信頼を獲得していきます。
信五郎は浅子の言うことをよく聞く夫として知られ、時には浅子にビジネスの助言を求めるなど、先に亡くなるまで(浅子が56歳の時に死去)良きパートナーであり続けました。
信五郎と浅子の子供は?加島屋の後継者
信五郎と浅子との間には、一人娘・亀子が誕生しています。亀子は母・浅子と違い学業や商いにのめり込むタイプではありませんでしたが、浅子の夫となった娘婿・恵三(子爵一柳家の次男で、東京帝国大学法科出の逸材)が加島銀行頭取、大同生命第2代社長に就任し、加島屋をしっかりと受け継ぎました。
また、九州の炭鉱に掛かりっきりになっていた浅子自身の希望もあり(「小説土佐堀川」による)、浅子のお付き(腰元)の小藤が信五郎の「世話」をすることになり、信五郎は小藤との間に三人の女子と一人の男子をもうけています。この男児、長男・広岡松三郎はのちに大同生命の第4代社長を務めています。
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