NHK連続テレビ小説「ばけばけ」第5週から登場する花田旅館の主人・花田平太についてまとめます。
この花田旅館と主人の花田平太は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が実際に宿泊した松江の旅館とその主人がモデルになっています。
ヘブンが宿泊する花田旅館の主人・花田平太

英語教師になるために松江にやってきた外国人レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)は、松江大橋のたもとにある昔ながらの花田旅館を気に入り、そこで長期滞在をすることになります。
花田旅館は、しじみ売りで生計を立てているトキ(髙石あかり)のお得意先です。女将の花田ツル(池谷のぶえ)はトキの良き話し相手であり、夫の花田平太(生瀬勝久)もトキを可愛がってくれています。
長期滞在するヘブンの食事作りなどを担当することになる宿の主人の平太ですが、英語がさっぱりわからずに愛想笑いでごまかしがち。はっきりと意見を言うヘブンと適当に話を合わせる平太の相性は悪く、当初は何かとぶつかってしまうようです。
特に、目の不調を訴えている旅館の女中・ウメ(野内まる)を雑に扱う平太に対し、ヘブンが異常なまでに激怒してしまうなど、価値観の違う両者の間には何かと軋轢が生まれていきそうです。
平太を演じる生瀬勝久によれば、花田平太という人物は「言うなれば、どうでもいい役」。決してトキの人生を変えるような重要人物ではなく、花田旅館のシーンはいい意味で気楽に見られるとのこと。
夫婦役を演じる池谷のぶえと生瀬勝久はこれまで共演を重ねてきており、演技の息もピッタリ。
平太とツルのほっこりとした夫婦関係や、ある出来事をキッカケにヘブンから「オヌシ、ジゴク!ジ!ゴ!ク!」などと酷評されてしまう平太のトホホな人間性など、花田旅館でのシーンはドラマにおける一服の清涼剤のようになりそうです。
▷生瀬勝久(なませ・かつひさ)…兵庫県西宮市出身の65歳の俳優。ドラマ「TRICK」「ごくせん」「警部補 矢部謙三」「19番目のカルテ」「下剋上球児」、映画「仮面ライダーシリーズ」「お父さんのバックドロップ」など多数の映像作品に出演し続ける、日本を代表する名優、バイプレイヤーの一人。
NHK朝ドラは「純ちゃんの応援歌」(1988年・興園寺清彦役)、「まんてん」(2002年・花山圭介 役)、「べっぴんさん」(2016年・坂東五十八役)、「おちょやん」(2020年・長澤誠役)、「ブギウギ」(2024年・タナケンこと棚橋健二役)に出演。
花田平太のモデル ラフカディオ・ハーンが激怒した旅館の主人
▼ちょっと気難しい夫「ヘルンさん」との日々が本人の言葉によって語られる、小泉セツ(松野トキのモデル)の「思ひ出の記」。富田旅館の主人とのエピソードも登場します。
松江にやって来たばかりのレフカダ・ヘブンが旅館に滞在し、その旅館の主人・花田平太のいい加減な態度に憤慨する…。
「ばけばけ」で描かれる一連の旅館滞在のエピソードは、ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が松江で最初に滞在した旅館「富田旅館」(現在の大橋館:島根県松江市末次本町40-40)での出来事がモチーフになっています。
1890年(明治23年)、島根県尋常中学校、島根尋常師範学校に英語教師として赴任することになったハーンは、松江での最初の3ヶ月間を富田旅館で過ごしています。
街の人々の生活を身近に感じる昔ながらの旅館生活を楽しんでいたハーンでしたが、宿の主人の「ある態度」に激怒し、3ヶ月ほどで宿を引き払い松江市内の屋敷に引っ越しています。
この宿には小さい娘がおり眼病を患っていたそうなのですが、それを見て気の毒に思ったハーンが宿の主人に早く病院に連れて行くように進言したそうです。
しかし、宿の主人はただ「はいはい〜」と言ってハーンの忠告を何度もスルー。ハーンは「珍しい不人情者、親の心ありません」と主人の人間性に激怒し、ついには宿を出て引っ越してしまったのだとか。
ハーンは引っ越し先でも、隣人が富田旅館の主人と友人だと知ると態度が急変。「あの珍しい不人情者の友達、私は好みません。さようなら、さようなら」と言ってその場から立ち去ってしまったそうで、よほど宿の主人のことが嫌だったのでしょう(笑)。
こうした史実のエピソードをもとに、ちょっといい加減なところもある花田旅館の主人・花田平太のキャラクターが創作されています。
ハーンは16歳の時に事故で左目を失明しており、誰よりも目の健康の大切さを痛感していました。ハーンは、宿を出た後に「娘少しの罪ありません、ただ気の毒です」と言って自分でこの娘を医者にかけて全快させてあげたそう。ハーンの優しさを感じるエピソードですね。
▼松江大橋から見る大橋館。ここにあった富田旅館でハーンは松江での最初の3ヶ月を過ごし、街の喧騒を身近に感じる生活を送っています。「ばけばけ」でも、花田旅館は松江大橋のたもとにあるという設定。
