NHK連続テレビ小説「ブギウギ」の終盤では、スズ子の愛娘・愛子を出しに使った脅迫事件が発生。スズ子は犯人から3万円を要求されることになります。
この記事では、事件が発生する1955年(昭和30年)当時の要求額3万円がどれほどの貨幣価値を持っていたのか、当時の物価などから推測してみます。
娘の誘拐をほのめかしスズ子を脅迫 3万円を要求する犯人
世田谷の新邸宅で暮らし始めてしばらく経った1955年(昭和30年)頃、スズ子(趣里)は思いもかけない事件に巻き込まれることになります。
「娘を誘拐されたくなければ3万円を用意しろ」
匿名による卑劣な脅迫を受けたスズ子は世田谷署に通報し、同署の捜査主任である刑事・高橋(内藤剛志)らが捜査のためにスズ子の自宅に駆けつけることになります。
1955年といえば今から69年も前のこと。当然ながら現在とは物価感覚や貨幣価値が大きく異なるため、当時の3万円がどれくらいの価値を持つのか分かりづらいかと思います。以下、当時の物価や給料などから「3万円」の価値を推測してみます。
【史実】笠置シヅ子は1954年(昭和29年)に娘のエイ子を誘拐すると何者かに脅され、6万円を要求されています。ドラマでは要求額が半額の3万円となっています。
要求額「3万円」=当時の初任給3ヶ月分、現在の60万円くらいか
当時の物価感覚を知るには、現在との比較がしやすい公務員の初任給などを見るのが良いかと思います。
★1955年当時の初任給
・小学校教員の初任給=7,800円(東京の公立・月額)
・国家公務員の初任給=8,700円(大卒、一種・月額)
・大卒事務員の初任給=12,907円(男性)、11,489円(女性)
(参考)スズ子が犯人から要求された金額=30,000円
1955年当時の教員や公務員の初任給が1万円弱で、一般庶民の月収の平均もだいたい1万円前後だったそう。
つまり、スズ子が犯人から要求された「3万円」は当時の新人公務員や一般庶民のおよそ3ヶ月分の収入、生活費に相当すると考えられます。それなりの額ですね。
ちなみに、2024年現在の小学校教員の初任給は21万円前後であり、大卒事務員の初任給は22万円くらい。つまり1955年にスズ子が要求された3万円(当時の初任給3ヶ月分)は、2024年現在の物価感覚に当てはめると約60万円に相当すると考えられそうです。
大スターの娘を出しに使った脅迫事件としてはちょっと金額が少ない気もしますが、この「初任給3ヶ月分」という生々しい金額が、逆に犯人が切羽詰まった状態である(本当の悪人ではない?)ことを予感させます。
やがて犯人の素性が明らかになっていくと、人情を何よりも重んじるスズ子や、事件の捜査を指揮した人情派の刑事・高橋(内藤剛志)が犯人とその家族に手を差し伸べていき…。
【史実の補足】
史実では1954年(昭和29年)に笠置シヅ子と娘のエイ子に対する脅迫事件が発生しています。6万円を要求する複数回の脅迫電話があった後に、現金受け渡し現場として指定された自由が丘駅前に現れた30歳の無職の男が現行犯逮捕されています。犯人は結婚が決まっていたものの失業してしまい、金に困っていたとのこと。
【参考・余談】
日銀やIMFが公表している日本の消費者物価指数を参考に計算すると、2023年の消費者物価指数は1955年当時の約6.584倍。この数字を用いると、1955年にスズ子が要求された金額「3万円」は、おおよそ現在の20万円ほどの価値と計算できます。
ただし消費者物価指数だけで単純計算をすると実際の物価感覚と合致しないケースが多いため、この記事では当時の初任給から物価感覚を推測しています。