NHK連続テレビ小説「花子とアン」に関連する書籍をまとめておきます。
「花子とアン」は出版物と物語が密接に関係しており、これら関連書籍を読んでおけば、よりドラマを楽しめると思います。
「花子とアン」のこの先のストーリーが知りたい!
『アンのゆりかごー村岡花子の生涯』(新潮文庫)
ドラマ「花子とアン」の原案。花子の孫にあたる作家・村岡恵理によって書かれた村岡花子一代記で、この一冊を読めば花子の人生を深く理解出来るでしょう。
ドラマ「花子とアン」は『アンのゆりかご』を土台としたフィクション。この一冊を読めば、この先に大まかなドラマの展開がわかります。
「花子とアン」には実在しない人物も多数登場します(白鳥かをるこ様、醍醐さんなど)。逆に、ブラックバーン校長や嘉納蓮子(白蓮)のモデルとなった実在人物も『アンのゆりかご』には多数登場しており、ドラマとどこが同じでどこが違うのか、という楽しみ方も出来ます。
村岡花子の文学の世界を知りたい!
『村岡花子と赤毛のアンの世界』(河出書房新社)
『アンのゆりかご』が村岡花子の人生を時系列中心に描いているのに対し、こちらの『村岡花子と赤毛のアンの世界』は村岡花子が愛した文学、創作の世界の話題を中心にまとめられています。
村岡花子と『赤毛のアン』、原作者のモンゴメリに関すること(梨木香歩×熊井明子の対談などもあり)。それに「子どもたちに捧ぐ」として『みみずの女王』『黄金の網』『たんぽぽの目』の童話三部作の掲載、座談会「私の母校を語る」(関屋敏子×林芙美子×深尾須磨子×村岡花子×吉屋信子)、花子と関わりのあった知人友人たち(白蓮、吉屋信子、市川房枝)と文学についての話題など、当時の女性文壇の豊かさ、華やかさを味わえると思います。
村岡花子の生の声を聞きたい!
『腹心の友たちへ』(河出書房新社)
「花子とアン」でも「腹心の友」という言葉はキーワードのように出てきますね。
村岡花子による『腹心の友たちへ』は、美しく優しい言葉で綴られた珠玉のエッセイ集です。何気ない出来事や新しい事柄にワクワクする一人の女性「村岡花子」の姿が、ありありと伝わってきます。
このエッセイ集には「花子とアン」の元ネタとなっているエピソード(麻布十番で買っていた「金つば」、結婚が決まった柳原燁子=白蓮との喧嘩、ブラックモア先生とのやり取りなど)が多数散りばめられており、「花子とアン」のもう一つの原案と言ってもいいかも知れません。
村岡花子の生の声に触れたいということであれば、『腹心の友たちへ』を手に取ることをおススメします。
白蓮事件を詳しく知りたい!
『白蓮れんれん』(集英社文庫)
歌人・柳原白蓮と7歳年下の青年社会運動家・宮﨑龍介の恋の逃避行「白蓮事件」を描いた、林真理子による伝記小説。林真理子はこの作品で第八回柴田錬三郎賞を受賞しました。
当時は、結婚した女性が他の男と情を通わすことは厳しく罪に問われた時代。文字通り、白蓮は命懸けで恋を貫き、宮﨑龍介と逃亡を図りました。
「花子とアン」においても、この名高い「白蓮事件」が描かれるようです。物語が佳境に入る前に『白蓮れんれん』を一読しておくとよいでしょう。
「白蓮事件」「柳原燁子(白蓮)」に関する書籍は他に『恋の華・白蓮事件』『西日本人物誌[20]柳原白蓮』などがあります。
村岡花子の作品が読みたい!
『赤毛のアン』(新潮文庫)
アニメや絵本などで『赤毛のアン』の世界に親しんでいる人も多いと思いますが、村岡花子が翻訳した『赤毛のアン』をきちんと読んだ人は意外に少ないかも知れません。
現在では様々な新訳や完全訳といったものが発売されており、訳された言葉も現代の言語感覚に近い物が見られます。しかし、昭和20年代に訳された村岡花子版の「赤毛のアン」は、時を経てもなお色あせない美しい言葉の数々が魅力です。
夢のように美しいプリンスエドワード島、グリーン・ゲイブルズの風景と、アンが巻き起こす愉快な事件の数々が、村岡花子らしい上品で洗練された日本語訳によって楽しめます。
『爐邉』(日本基督教興文協会)
「花子とアン」では、はなの初めての出版物は聡文堂から出版された「たんぽぽの目」ということになっていましたが、村岡花子の初めての出版物は、大正6年(1917年)に日本基督教興文協会から出版された『爐邉』(炉辺=ろへん)です。残念ながら現在は復刻版等は出回っていない様子。
「日本には父母子供も一緒になって楽しむのに適した読み物が少ない」と考えていた花子は、山梨英和女学校で教師をしながら、寄宿舎でこつこつと翻訳と執筆を続け、十三篇におよぶ物語集を完成させました。
『爐邉』というタイトルには、花子が山梨の農村の教え子の家で味わった、暖かい炉を囲む家族の幸福な光景が投影されていました。花子はこの『爐邉』を「平凡」であることを認め、「洗練された”平凡”。それは直ちに非凡に通ずるものであると思って居りますから。」と前書きで述べています。
この「平凡」→「非凡」に関するエピソードは、「花子とアン」において、はなが執筆した「たんぽぽの目」に対する梶原編集長(藤本隆宏)の評として扱われていましたね。
『王子と乞食』(岩波文庫)
16世紀のイングランドを舞台にした、古典中の古典「The Prince and The Pauper」の村岡花子による日本語訳。
国王の跡継ぎとして生まれたエドワードと、貧民窟で育ったトム(二人はなぜか顔がそっくり!)が身分をひょんなことから入れ替えて生活する話。外の世界を知った王子・エドワードは、その理不尽さを目の当たりにし、後年に慈悲深い国王へと成長していきます。
「花子とアン」ドラマ内では、村岡英治の弟・郁弥(町田啓太)がロンドンから持ち帰ったという原書「The Prince and The Pauper」をはなに手渡し、それを手にしたはなは、再び英文和訳に情熱を燃やすようになります。
白蓮の作品が読みたい!
『踏絵』(ながらみ書房)
「花子とアン」で嘉納蓮子が夫・伝助の資金援助のもとに製作した処女作の歌集『踏絵』。竹久夢二が挿絵を手がけるなど豪華な装丁であり、蓮子の渾身の思いが込められていました。この『踏絵』を読んで宮本龍一(中島歩)は蓮子の才能に惚れ込み、二人は激しい恋に落ちていきます。
『踏絵』は蓮子のモデル・柳原白蓮の処女作として実在します。大正4年(1915年)に夫・伊藤伝右衛門の資金援助により製作された『踏絵』。当時の歌壇では賛否両論ありましたが、新聞等でも好意的に取りあげられ、話題となりました。
「白連は藤原の女なり。」で始まる佐佐木信綱の序章、竹久夢二による美しい装丁によって、愛のない生活に苦しむ白蓮の孤独や苦しみなどが告白的短歌として結集しています。
『踏繪』は旧伊藤伝右衛門邸内「ショップ白蓮」、「飯塚観光ネットショップ」にて販売しているほか、「ながらみ書房」でも取り扱っているようです。
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