NHK連続テレビ小説「ひよっこ」には、ヒロインの故郷として茨城県北部にあるという架空の村「奥茨城村」が登場します。
この記事では、ヒロインが話す方言「茨城弁」についてまとめます。
「ひよっこ」の茨城弁
物語は、1964年(昭和39年)の「奥茨城村」から始まります。奥茨城村は茨城県北部にあるという設定の農村地帯で、茨城県高萩市、常陸太田市、大子町など茨城県北地域がロケ地となっています。
「ひよっこ」でヒロインはじめ奥茨城村の人々が話すのが「茨城弁」です。参考までに、「ひよっこ」第一話で登場した茨城弁をピックアップしてみます。
・おとうちゃんいづ帰ってぐんの?
・卵五つもはー産んでんぞー
・あ、どうすっぺ!
・あーもうやだあ、やめでやめで!
・いってこ!
茨城弁の特徴とは
以下、簡単に茨城弁(茨城方言)の特徴をまとめます。「都道府県別 全国方言辞典」(佐藤亮一編・三省堂)などを参照しています。
・関東方言と東北方言の特色を反映している。特に、県北地域では東北方言的特色が強い。
茨城県北部は北を福島県いわき市などと接していて交流があり、特にいわき市などで話させる「岩城弁」と似通った特色を持ちます。関東と東北の方言の特徴を併せ持つ、独特の言語文化があります。
・南部東北方言と同じく、カ行、タ行が濁音化する。
茨城弁や南東北方言の特徴とも言える、カ行、タ行の濁音化(あるいは鼻濁音化)。「出来る」→「デギル」、「頭」→「アダマ」のように、カ行、タ行が語中または語尾にくる場合、濁音化します(細かい諸条件有り)。
・推量、勧誘などをあらわす表現が「〜べ」「〜ぺ」となる。特に、体言から続く場合は「〜だっぺ」となる。
文末の意志、推量、勧誘などをあらわす表現(文末)に、「〜べ」「だっぺ」が用いられます。例としては、「なんだろう」→「なんだっぺ」、「〜しよう」→「〜すっぺ」、「行こう」→「行くべ」のようになります。これは、文語の助動詞である「べし」の名残とされます。
・カ行、サ行の変格活用が特徴的。
カ変動詞「来る(クル)」が、「キネー(=来ない)」「キットギ(=来る時)」などと、語幹を「キ」とした一段活用化が進んでいます。※命令形は「コー(=来い)」。
・同音異義語をアクセントで区別しない無形アクセントである。
栃木県の大部分、福島県、宮城県と同様に、同音異義語を音の高低によって区別する習慣がほとんどありません。「雨」と「飴」、「橋」と「箸」など、首都圏ほかの地域で用いられるアクセントによる言葉の区別がなされません。
・動物や虫の名前に接尾語「〜メ」が付く。
「ネゴメ(猫)」「タヌギメ(狸)」「ヘァーメ(蠅)」「カンメ(蚊)」「バヂメ(蜂)」などと、動物の名前の後ろに「メ」を付けます。何だか動物が身近に感じられるようで、可愛らしい表現ですよね。
また、擬音語、擬態語の後ろに接尾語「〜スカ(スッカ)」が付くのも特徴的な言い回し。例「ガダスカガダスカ、ウッセァーゾ(=がたがたとうるさいぞ)」。江戸言葉などと共通する、連母音「アイ」が「エー」になる(ウルサイ→ウルセー、ウッセー)といった特徴も見られますね。