NHK連続テレビ小説「おちょやん」でヒロインが働くことになる大阪・道頓堀の町並みの撮影地についてまとめます。
現場ではオープンセットにより、大正期の道頓堀の町並みが再現されています。
京都の松竹撮影所の駐車場 大正期の道頓堀が出現
「おちょやん」ヒロイン・千代は大正5年に9歳で大阪・道頓堀の芝居茶屋「岡安」に女中奉公に出されます。
江戸時代から続く芝居街として栄えていた当時の道頓堀。多くの芝居小屋、芝居茶屋などが立ち並び、賑やかでモダンな町並みは「日本のブロードウェイ」ともされました。
NHKは松竹の協力を得て、京都・太秦の「松竹撮影所」(京都市右京区)の駐車場だった場所に、長さ80メートルに渡る巨大なオープンセットを建設。40軒のお店(パン屋、時計屋、写真館、洋品店など)、2軒の大きな芝居小屋(えびす座、鶴亀座)などが立ち並ぶ道頓堀の風景を再現しています。
セットはデザイナーを中心に美術チームが2ヶ月をかけて作り上げています。各店舗のショーウインドウや派出所の軒先に出来た「ツバメの巣」まで、ディテールへのこだわりはかなりの物。細部に宿るリアリティが、ドラマに命を吹き込んでいきます。
▼上空から見た松竹撮影所。スタジオ群の東側(右側)、細長く広がる駐車場スペースにオープンセットが建設されたと推測されます。太秦は女優・浪花千栄子が撮影のために足繁く通った街であり、彼女の終の棲家となった嵐山もすぐ近く。
道頓堀の仕出し屋、芝居茶屋で働いた浪花千栄子
このオープンセットは、ヒロインのモデルで女優の浪花千栄子が女中奉公に出た大正時代の道頓堀が再現されています。
当時の道頓堀は江戸時代から続く芝居街として栄えていました。現在の道頓堀商店街沿いには明治時代から続く「道頓堀五座」(戎橋付近から浪花座、中座、角座、朝日座、弁天座と並んでいた)と呼ばれる芝居小屋が立ち並び、それに付随する芝居茶屋、仕出し屋も多数存在。芝居小屋に弁当や座布団を運び込む女中が街を歩き回る、賑やかな街でした。
浪花千栄子は、浪花座と中座の中間にあったという仕出し屋「浪花料理」で9歳から働き、芝居小屋に弁当を運ぶ仕事の合間に芝居の世界に魅了されています。
また、後に駆け出しのフリーランス女優となり不安定な収入の足しにするために働いた芝居茶屋「岡島」も、この浪花料理のすぐ向かい辺りにあったとか。
そして角座、浪花座、中座など、千栄子が喜劇女優となり松竹家庭劇、松竹新喜劇の看板として活躍した舞台も「道頓堀五座」。千栄子にとって道頓堀は女優としての原点と言える場所なのです。
・【おちょやん】芝居小屋「えびす座」と「鶴亀座」 モデルは道頓堀五座「角座」と「中座+浪花座」
▼戎橋のすぐ近く、現在の「道頓堀ZERO GATE」の場所が浪花座だったようです。その何軒か東側のビルには「鳥貴族 道頓堀中座店」「ファミリーマート中座店」が入り、ここが中座だったことがわかります。「浪花料理」「岡島」はこの辺りにあったことになります。