NHK連続テレビ小説「スカーレット」で、小学生になった長男・武志が憧れているキックボクサー・サワムラについてまとめます。
この「サワムラ」ネタは前作朝ドラ「なつぞら」にも関わる小ネタと思われますので、そのあたりもまとめてみます。
武志、サワムラに夢中
1969年(昭和44年)。小学生(7〜8歳)になっているヒロインの長男・武志(中須翔真)は、キックボクシング選手の「サワムラ」に夢中です。
武志は暇があればサワムラの得意技である膝蹴りを繰り出し、朝から腹筋の特訓も行うなど、その熱中ぶりはかなりのもの。憧れのサワムラの試合が見たいため、テレビを欲しがっています。
昭和のスター格闘家・沢村忠
武志が憧れる「サワムラ」は、「キックの鬼」と呼ばれた昭和のヒーロー・沢村忠がモデルと考えられます。
沢村忠は、1943年(昭和18年)生まれの元格闘家、キックボクサー。幼少期から剛柔流空手道を習い大学時代に無敵を誇った後に、キックボクシングに転向しています。
1966年(昭和41年)に「日本キックボクシング協会」が誕生し、ここ日本で産声を上げたキックボクシング。テレビ時代とマッチし、すぐに国民的人気となった同競技の黎明期において、絶対的スターとして君臨したのが沢村忠でした(同協会の東洋ミドル級王座=14回防衛、東洋ライト級王座=20回防衛)。
「真空飛び膝蹴り」や「飛び前蹴り」を武器に連戦連勝を重ね、1973年(昭和48年)には三冠王・王貞治を抑えて日本プロスポーツ大賞を受賞するなど、お茶の間で大変な人気を誇りました。
漫画・アニメ「キックの鬼」
その人気はサブカルチャーの世界にも波及しました。
1969年(昭和44年)、沢村忠を主人公にした漫画「キックの鬼」(原作・梶原一騎、絵・中城けんたろう)が人気少年コミック誌「少年画報」(少年画報社)で連載開始。
翌1970年(昭和45年)には東映動画とTBSとの共同製作により、同名でアニメ化(全26話)。1971年(昭和46年)には映画化もされるなど、少年たちに広く人気となっています。これら漫画、アニメの影響で、沢村自身も「キックの鬼」という愛称(二つ名)で呼ばれるようになっています。
武志がサワムラに夢中になっているのがちょうど1969年(昭和44年)1月頃なので、時代背景的にもおおよそ沢村忠の活躍期、「キックの鬼」の放映開始時期と重なります。
「なつぞら」では「キックジャガー」として登場
東映動画のアニメーターたちの活躍をモチーフにした前作朝ドラ「なつぞら」にも、「キックの鬼」をモチーフにしたと思われる作品が登場しています(第22週〜)。
1969年(昭和44年)頃。出産を終えたばかりのなつ(広瀬すず)は、キックボクシング・沢村忠をモデルにした人気漫画「キックジャガー」のアニメ版の作画監督という大役を引き受けると、見事ヒット作へと導いています。
「なつぞら」には前作朝ドラ「まんぷく」に登場していた「まんぷくヌードル」が劇中に登場しており(アニメーターたちが休憩中に食べていた)、「まんぷく」→「なつぞら(まんぷくヌードル)」→「スカーレット(沢村忠)」と、近作朝ドラがそれぞれ小ネタで繋がっているといえます。
もしかしたら「スカーレット」劇中で、白黒テレビを購入した川原家の食卓に、なつが監督をしたアニメ「キックジャガー」が流れる場面があるかも知れません。