テレビ朝日系昼のシニア向けドラマ「やすらぎの郷」に登場した言葉「芸術は長く人生は短い」の意味、由来についてまとめます。
ヒポクラテスによるものだというこの言葉は、芸術を愛した「やすらぎの郷」の入居者たちにとって、心に響くものとなりそうです。
芸術は長く人生は短い
主人公・菊村栄(石坂浩二)が老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada」に入所してまず目にしたのが、広々としたロビーの頭上に掲げられたラテン語の言葉「Ars longa,vita brevis」でした。
施設の理事長である名倉修平(名高達男)の説明によれば、これは「芸術は長く人生は短い」を意味し、ヒポクラテスによる言葉とのこと。
古代ギリシャの医者・ヒポクラテス
ヒポクラテス(Hippokratēs 起源前460頃~前375頃)は古代ギリシャの医者で、迷信や呪術を排して科学的な医学の基礎を築いた人物です。医師の倫理にも言及し、「医学の父」などと言われる古代の偉人です。
このラテン語「Ars longa,vita brevis」は、ヒポクラテスが医術を志す人に向かって言った「医術(テクネー)を修得するには長い年月を必要とするが、人生は短い。だから、怠らずに勉学に励め」といった意味のギリシャ語の言葉が元となっており、これがギリシャ語からラテン語(Ars longa,vita brevis)、英語、日本語へと訳される過程の中で(※テクネー→Ars→Art)、こんにち日本人が用いる「芸術は長く人生は短し」の意味へと転じたようです。
※ギリシャ語のテクネー(τεχνη : techné)、その訳語であるラテン語のars、英語のartなどは、もともと医術や土木工学などの広い分野を含む「人工(のもの。自然に対比して、人間の技や技術など)」という意味を持っていた。それが科学技術の発展とともに、メインの意味である技術的・実用的な概念は「technics,technology」という言葉に、第二義的であった装飾・芸術といった概念は「art」という言葉にそれぞれ集約していった。
芸術を愛した「やすらぎの郷」入居者たち
こんにち日本で語られる「Ars longa,vita brevis(芸術は長く人生は短し)」という言葉には、「芸術を完成させるには、人生はあまりにも短い」という戒め、啓発的な意味とともに、「人の一生は短いが、生み出された芸術作品は(死後も)長く世に残る」といったポジティブでロマンティックな意味も含まれます。
芸術・芸能を生涯愛した「やすらぎの郷」の入居者たちは、老人ホームに入所してもなお、芸術への夢、憧れ、未練を抱き続けます。「やすらぎの郷」のロビーに飾られた標語「Ars longa,vita brevis」は、入居者たちの心を揺さぶる言葉となることでしょう。
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