NHK連続テレビ小説「ブギウギ」第23回（11月1日放送）、第26回（11月26日放送）などに登場した歌「恋のステップ」についてまとめます。
この「恋のステップ」は、昭和9年（1934年）に笠置シヅ子（当時の芸名は三笠静子）が記念すべきレコードデビューを飾った曲として知られます。
チェリオ！スズ子が歌う「恋のステップ」
昭和12年（1937年）。梅丸少女歌劇団（USK）に入団してから10年が経過していた福来スズ子（趣里）は、秋山美月（伊原六花）、リリー白川（清水くるみ）らとともに劇団を牽引する存在になっていました。
「桃色争議」により大和礼子（蒼井優）や橘アオイ（翼和希）が去った後のUSKは、林部長（橋本じゅん）の打ち出した方針もあり、スズ子の歌と秋山の踊り（タップダンス）がレビューの大きな売りとなっています。
その中でも、スズ子が「♪あなたの胸に抱かれりゃ〜花も燃えそな紅の花〜」と歌いあげるレビュー主題歌「恋のステップ」は大人気。歌の合間に入る「チェリオ！」の楽しい掛け声と、秋山の切れのあるタップダンスが融合し、人気の演目となっています。
スズ子は、自分の歌ではなく秋山のタップダンスに聴衆の目が釘付けになることに少し不満げです。一方の秋山も、自分の踊りがスズ子の歌に負けていると感じており、二人は知らず知らずのうちにライバルとして切磋琢磨する関係になっています。
スズ子が歌う「恋のステップ」を演出家の松永大星（新納慎也）が見て気に入ったことをキッカケに、スズ子は東京の新劇団梅丸楽劇団（UGD）に誘われることになります。
笠置シヅ子（三笠静子）のレコードデビュー曲「恋のステップ」
▼ボーナストラックとして「恋のステップ」も収録されたCD「ブギウギ伝説〜笠置シヅ子の世界〜」。「恋のステップ」の共演者として、大阪松竹少女歌劇声楽部の名がクレジットされています。
ドラマに登場した福来スズ子の持ち歌「恋のステップ」は、スズ子のモデル人物である笠置シヅ子の記念すべきレコードデビュー曲として知られます。
昭和9年（1934年）。笠置シヅ子（当時の芸名は三笠静子）が所属していたレビュー団・松竹楽劇部は、「桃色争議」の騒動を経て名称を大阪松竹少女歌劇団（OSSK）に改称すると、柏晴江、美鈴あさ子、三笠静子ら次世代のスターたちが台頭しています。
新生OSSKの新たな本拠地となった大阪劇場（大劇）において披露された、OSSK第一回記念公演「カイエ・ダムール」。この演目の主題歌となったのが、三笠静子が歌った「恋のステップ」（作曲：ヘンリー服部、作詞：高橋掬太郎）でした。
「ブギウギ」劇中でスズ子が歌ったように、「恋のステップ」は弾むようなリズムが楽しいポピュラーソング。歌の合いの手として「チェリオ！」の明るい掛け声が入るのも特徴的です。
※「チェリオ」は英語のcherioが語源。親しい間柄において「さようなら」「じゃあまた！」といった挨拶に使われるほか、互いの健康を祝して「乾杯！」「万歳！」などといったニュアンスで使われる掛け声です。
親会社である松竹も新生OSSKの船出に力を入れていたようで、同年に三笠静子が歌うレコード「恋のステップ」をコロンビアから発売させています。
後に「ブギの女王」として国民的歌手になる笠置シヅ子にとって、この「恋のステップ」が記念すべきレコードデビュー曲になっています。
なお、「恋のステップ」の作曲者である「ヘンリー服部」は服部良一（「ブギウギ」羽鳥善一のモデル）の別名だとする文献も多かったようですが、実はまったくの別人である服部逸郎（レイモンド服部）という人物が「ヘンリー服部」だったらしいことが近年に判明しています（NHK出版新書「昭和ブギウギ」より）。
後に師弟関係になる服部良一と笠置シヅ子が初めて出会ったのは、シヅ子が東京で発足する男女混成のレビュー団・松竹楽劇団（「ブギウギ」梅丸楽劇団のモデル）に参加するために上京した昭和13年（1938年）のこと。「恋のステップ」のレコードデビューから4年後のことです。
「ブギウギ」でもこの時系列の通り、初対面の羽鳥善一の前で持ち歌である「恋のステップ」を披露するスズ子の姿が描かれます。
▼第6週以降、スズ子と秋山は東京で旗揚げされる松竹楽劇団に参加するために上京します。大和礼子が「いずれ歌があなたの武器になるかも知れない」と助言してくれた通り、スズ子は東京で歌の師匠・羽鳥善一と出会い、大きく羽ばたいていくことになります。
