三谷幸喜監督作品の映画「清須会議」。2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」と平行して見ると意外に楽しめるので、そういった観点から映画「清須会議」の見どころをまとめてみたいと思います。
「清須会議(清洲会議)」は、天正10年(1582年)に本能寺の変により信長が討たれたことを受け、織田家当主の後継者、ならびに遺領(死後に残された領地)の配分を決定することを目的に開催された評定(会議)です。尾張国の清洲城で行なわれたことから、この名称で呼ばれます。
「清須会議」の出席者は、当時の織田家家臣の重臣だった柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興の四人。この会議により、織田家家臣の筆頭家老だった「柴田勝家」と、当時メキメキと力を付けてのし上がって来ていた「羽柴秀吉」の立場が一気に逆転します。
閉ざされた空間で行なわれる会議では駆け引き、騙し合い、談合などが発生し、密室劇が得意な三谷幸喜にとっては格好の題材と言えます。
映画「清須会議」主要キャスト
<織田家重臣・会議出席者>
・柴田勝家=役所広司
・羽柴秀吉=大泉洋
・丹羽長秀=小日向文世
・池田恒興=佐藤浩市
<織田家>
・織田信長(死亡)=篠井英介
・織田信忠(信長の長男・死亡)=中村勘九郎
・お市の方(信長の妹)=鈴木京香
・織田三十郎信包(信長の弟)=伊勢谷友介
・織田信雄(信長の次男)=妻夫木聡
・織田信孝(信長の三男)=坂東巳之助
・松姫(信長の長男・信忠の妻)=剛力彩芽
<その他>
・黒田官兵衛(秀吉の軍師)=寺島進
・前田利家(柴田勝家副官)=浅野忠信
・滝川一益(織田四天王の一人、遅れて会議に出席できず)=阿南健治
・寧(秀吉の妻、おね)=中谷美紀
・明智光秀(織田家家臣)=浅野和之
「軍師官兵衛」を見慣れた目で見ると、「清須会議」のキャストが新鮮に見えます。以下、二つの作品の登場人物を比較。
役所広司演じる「人のいいオッサン」柴田勝家
「軍師官兵衛」では無味乾燥キャラだった柴田勝家(近藤芳正)、丹羽長秀(勝野洋)の二人が中心的に扱われ、役所広司、小日向文世によって人間臭く演じられている。特に、役所広司演じる筆頭家老・柴田勝家が単なる「人のいいオッサン」と化しており、彼が後々失脚するにあたり説得力がある(笑)。
飄々とした「猿」大泉洋の秀吉
「軍師官兵衛」での安定感、凄みのある「竹中秀吉」とは違い、コテコテの尾張弁を話す「大泉秀吉」は飄々としたつかみ所のない若造キャラになっている。その「軽さ」が「狡猾さ」にも通じ、「竹中秀吉」よりもこちらのほうが「猿」っぽいかも。
寺島進の官兵衛は岡田准一と似ている
黒田官兵衛の冷静なキャラクターは両作とも似通っている。歩き方や小柄な風貌など、引きの映像で見ると「寺島官兵衛」は「岡田官兵衛」にそっくり。
光姫・中谷美紀が秀吉の妻・寧を演じている!
「軍師官兵衛」では官兵衛の妻・光を演じている中谷美紀が、「清須会議」では秀吉の妻・寧(おね)を演じている。太い眉毛の田舎顔で「いこまい!」「だで!」など尾張弁を連発し、踊りを踊って場を盛り上げるなど、黒木瞳演じる「おね」よりも野趣あふれるキャラ。「寺島官兵衛」と「中谷寧」のニアミス場面もあり。
鈴木京香の「お市の方」は妖艶
「軍師官兵衛」では内田恭子演じるお市の方が、出てきたと思ったらあっという間に死んでしまい「ぽかーん」とさせられたが、「清須会議」の鈴木京香版・お市の方は柴田勝家を色仕掛けで落とすなど、戦国一の美女と言われたお市の方の妖艶さを前面に打ち出している。
織田家の面々は濃いキャラクター揃い
「軍師官兵衛」ではそれほど描かれなかった織田家の面々(アホキャラの信雄、切れ者だが不遇の信孝、アウトローな三十郎信包など。いずれもデフォルメあり)の人間模様が「清須会議」では描かれている。
「軍師官兵衛」を見た後で見ると楽しめるかも
映画「清須会議」は三谷幸喜得意の「お気楽エンターテイメント」ではありますが、「軍師官兵衛」で官兵衛側の視点から描かれていた「本能寺の変~織田家の御家騒動」を、織田家の内側からの視点でじっくり見られるという楽しみがあります。
本格的に歴史に通じている方には勧められませんが、「軍師官兵衛」をお気軽に楽しんでいるライトな視聴者層にはおススメの一本です。