NHK連続テレビ小説「マッサン」で耳にすることになる「酒石酸(しゅせきさん)」についてまとめます。
ワインの製造過程で析出する「酒石酸」は、意外な用途があることで知られます。
軍からの命令
マッサン(玉山鉄二)が経営する「ドウカウヰスキー」は、戦争が激化すると軍からある命令を下されます。それはワインの製造過程で出る「酒石酸」を納めろというもの。国が言うには、潜水艦を動かすために酒石酸が必要とのことです。
ドウカウヰスキーではこれまでワインを造ったことありませんでしたが、マッサンはこの仕事を森野一馬(堀井新太)に任せます。一馬はお国のために役立てると喜び、この仕事に熱心に取り組んでいきます。
ワインに含まれる「酒石酸」
この酒石酸ですが、ワインに含有している酸です。ワイン液中や、ビンに滓(カス)として沈殿したり、貯蔵する酒樽の周壁に結晶体として表出したりと、ワインを醸造すると副産物として「酒石酸」が含まれます。
酒石酸の用途 ロッシェル塩→兵器に
この酒石酸を抽出または採取し、カリウムおよびナトリウムを化合させると「ロッシェル塩」(酒石酸カリウム、またはナトリウム)となります。この「ロッシェル塩」は音波を素早く捉える特性を持ち、これを利用した「音波防御レーダー」「対潜水艦用の水中聴音機」は、第二次世界大戦において潜水艦や魚雷に対処する兵器として大きな効果を発揮していました。
なお、現在では酒石酸は食品添加物や医療用に用いられるなどしています。
酒石酸のために葡萄酒を…庶民は喜ぶ
ドラマ「マッサン」のモデル企業であるニッカウヰスキーの前身・大日本果汁株式会社でも、電波兵器に欠かせない酒石酸を軍に収めるために、山葡萄から葡萄酒を造っていました。
大日本果汁創業者・竹鶴政孝は日本の気候風土にワインは適していないと考えていたため、あくまで酒石酸を採るためにワイン造りを行っていました。
その際に「副産物」(普通は逆ですが笑)として出来上がる葡萄酒には砂糖が添加され、「甘味葡萄酒」として配給に回されました。砂糖も酒類も手に入れづらかった当時の余市の人々にとって、この「甘味葡萄酒」は嬉しい配給品だったようです。
軍事目的のワインづくり
戦時中、酒類の行政を扱っていた大蔵省は海軍からの求めに応じ、酒石酸の増産を決定しています。これにより酒石酸を生産する工場のために原材料の便宜を図り、生産量が統制されていた(贅沢品とされた)ワイン醸造の規制を緩和。国を挙げてワイン造りを推進していきました。
こうした流れの中で、マッサンの工場もワイン造りという新たなミッションを任されるのです。果樹であるブドウが兵器に変わるとは、なんとも不思議です。
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