NHK連続テレビ小説「ブラッサム」に登場する珠の従兄・木村保(きむら・たもつ)についてまとめます。
この木村保という人物は、宇野千代の母方の従兄・藤村忠(ふじむら・ただし)がモデルになっています。
【ブラッサム】従兄の木村保 珠と急接近、同棲へ?
高等女学校を卒業し岩国の尋常小学校の代用教師となった葉野珠(石橋静河)。しかし同僚教師とのスキャンダルにより免職処分となると、それが町中の噂となってしまい、珠は肩身の狭い思いをしていました。
そんな折、珠は従兄の木村保(金子大地)と偶然再会します。保は珠の最初の結婚相手だった木村享一の弟で、京都の第三高等学校(京都大学の前身)に通う学生。ちょうど夏休みに岩国の実家に戻っていたのでした。
話し相手がいなかった珠は、「どうせワシは京都に戻るんじゃけえ、どがあな噂が立とうと構わん」と言ってくれた保とさまざまな話をし、すっかり保と打ち解けていきます。
珠と文通をする約束をし、京都に戻っていった保。そんな二人の関係を叔母の照子(山田真歩)が嗅ぎつけたのでしょうか。
照子は帝大を目指している保の下宿先での身の回りの世話をして欲しい、ゆくゆく二人は一緒になったらええ、という驚きの提案を珠に持ちかけて…。
木村保は、後述のように宇野千代の従兄で2番目の夫だった藤村忠がモデル。珠と保は史実と同じく、同棲生活から結婚へと至る可能性があります。
▼NHKドラマのインスタアカウントには、金子大地(木村保役)と山田真歩(照子)の撮影現場でのツーショット写真が掲載されています。背後に見える「三好」の文字は帝大生になった木村保が暮らす東京本郷の下宿屋・三好のもの。珠は照子からの頼みにより、三好で保との同棲生活を開始することになりそうです。
【史実】モデルは宇野千代2番目の夫 従兄の藤村忠
「ブラッサム」に登場する従兄の木村保は、宇野千代の2番目の夫で従兄の藤村忠がモデルになっています。
藤村忠は、宇野千代の伯母(千代の亡き実母の姉)・藤村カツの息子で、千代の最初の結婚相手だった従兄の藤村亮一の弟にあたる人物です(千代と亮一の結婚は10日で破綻)。
同僚教師とのスキャンダルにより代用教師の職を追われ、岩国から朝鮮の京城(ソウル)に移り住んだ千代。
その同僚教師から絶縁状を突きつけられ失意の中にあった千代は、京城から岩国に戻ると伯母のカツと偶然再会し、京都の第三高等学校に通っていたカツの息子・藤村忠(岩国に帰省中だった)とも再会しています。
千代がすっかり忠と打ち解けている様子を見たカツは、千代に対し京都に行って忠と一緒に暮らして生活の面倒を見て欲しいとオファーを出しています。

【史実】千代と忠の蜜月生活 京都から東京、札幌へ
こうして京都で忠と暮らし始めた千代は、やがて忠と男女の仲になると、忠が東京の帝国大学に進学するのにあわせて一緒に上京。
当初は二人で忠の兄の亮一(千代の元夫)のもとに転がり込みますが、その後は二人で下宿を借り、千代はさまざまな仕事をしながら忠の東京での生活を支えています。
この東京時代、千代はすでに得意の文章(懸賞小説)で幾度か賞金を稼ぎ、短期のアルバイト先だった本郷の高級洋食店「燕樂軒」では菊池寛、芥川龍之介、久米正雄ら文士、そして中央公論社の名編集長だった瀧田樗陰と知遇を得るなど、文学の世界に足を踏み入れつつありました。
1919(大正8)年、千代はまだ帝大の学生だった忠と正式に結婚をしたようです。
翌1920年(大正9年)、忠が帝大を卒業し北海道拓殖銀行に就職すると、千代は忠から2ヶ月ほど遅れて札幌へと転居。この札幌で千代は得意だった仕立て物の仕事で金を稼ぎ、頼母子講で大金を得て家を買うなど、順風満帆な新婚生活を送っています。
【史実】尾崎士郎と電撃的な出会い 夫への大きな裏切り
▼小説「人生劇場」シリーズなどがヒットした流行作家・尾崎士郎。宇野千代自身が「いちばん好きだったのは尾崎です」と後に語った熱愛の相手でした。
札幌で迎えた最初の冬。雪に閉ざされた日々の中で、千代はふとまた文章を書いてみようと思い立ち、東京の新聞「時事新報」の懸賞小説に『脂粉の顔』を送り、見事に一等に入選しています(二等は後に出会う尾崎士郎)。
その後、東京の燕楽軒で知り合った中央公論社の滝田樗陰に小説『墓を発く』を送りつけると、これが雑誌「中央公論」に掲載されて作家としての道が開かれていきます。
この時、編集部の手違いにより『墓を発く』が「中央公論」に掲載されたことが千代に上手く伝達されず、返答がないことにしびれを切らした千代は保にすぐに帰るという許可を得て札幌から上京し、中央公論社を訪ねています。
千代はそこで掲載料として366円(当時としては腰が抜けるほどの大金)を渡されると、その足で岩国に凱旋帰郷。継母や弟妹たちと楽しい時を過ごすと、その足で再び東京の中央公論社へと戻るのですが、そこで文士の尾崎士郎と運命の出会いを果たしています。
その日の夜、千代は編集者を介して尾崎士郎の滞在先のホテルで会食をすると、すっかり惚れ込んでしまった尾崎士郎と男女の仲となり、その後すぐに士郎と東京で同棲を開始しています(忠とは婚姻状態のまま)。
札幌に残したままだった夫の藤村忠の消息は、半年後に継母のリュウからの手紙で始めて知ったほどに衝動的で、後先を考えない行動だったそうです。
1923年(大正12年)には東京・馬込に尾崎士郎と暮らす家を建てるなど、尾崎士郎と事実婚のような形で生活を送っていた千代。1924年(大正13年)に藤村忠との離婚が成立すると、同年に尾崎士郎と3度目の結婚をしています。
※「ブラッサム」で物語中盤から登場する文士・西尾一路(染谷将太)は尾崎士郎がモデル。「ブラッサム」でも珠が西尾一路と運命の出会いをして意気投合、パートナーの保との関係に亀裂が生じていくことが予想されます。
▼宇野千代の自伝的小説では、2番目の夫・藤村忠との馴れ初めや結婚、離婚の経緯などが詳しく語らえれています。ただし、裏切ってしまった忠に対して大きな引け目があったのか、小説内で忠は「悟」という偽名で登場し、「悟」の札幌での就職先も銀行ではなく新聞社に設定が変更されるなど、少し事実をぼかした形で語られています。

