ドラマ「不適切にもほどがある!」時代設定と時代背景まとめ バブル景気、おニャン子、アイドル文化…

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TBS系金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」(主演:阿部サダヲ、脚本:宮藤官九郎)は「意識低い系タイムスリップコメディ」がキャッチフレーズ。昭和と令和の時代間ギャップが、不本意にもタイムスリップしてしまった主人公たちの言動から浮き彫りになっていきます。

この記事では、ドラマで描かれる時代設定をまとめるとともに、この時代設定が物語にどのような影響を与えていくかをまとめます。

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目次

1986年(昭和61年)→2024年(令和6年) 昭和のパワハラ教師がタイムスリップ

この物語の主人公である体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)は、1986年(昭和61年)の世界の中学校で野球部顧問をしている「昭和すぎる男」。市郎の教育方針はケツバット、水飲み禁止、体罰、暴言などパワハラ臭、昭和臭のオンパレードであり、生徒たちからは「地獄のオガワ」と呼ばれて恐れられています。

ある日、市郎がいつものようにタバコを吸いながら(!)バスで帰宅していると、ついウトウトと車内で眠ってしまいます。しばらくして市郎は目を覚ましますが、目の前には短すぎるスカート姿で耳からうどん(※筆者注:アップル社のAir podsと思われます)を垂らしている、不思議な出で立ちの女子高生が出現。

市郎は不思議な出で立ちの女子高生に対しておかしいと指摘しますが、周囲の乗客たちは逆に車内でタバコを吸っている市郎こそがおかしいと猛反論。市郎は逃げるようにバスを下車しますが、そこには見たこともないような格好をした人々(未来人)が歩き、見慣れない町並みが広がっていました。

こうして2024年(令和6年)にタイムスリップしてしまった市郎は、「不適切すぎる」昭和の価値観のままコンプラが厳しい令和の時代を生きていくことになり…。

バブル景気が始まる1986年 おニャン子、ドラクエ…長い昭和の最終盤

市郎がいた1986年(昭和61年)は、今から38年前にあたります。

世にいう「バブル景気」はこの1986年頃から始まり1990年代の初頭に終わったとされ(バブル崩壊)、いわば昭和の高度経済成長期の後に訪れた「最後にして最強の浮かれた時代」だったわけです。それだけに、ドラマの1986年の登場人物たちは基本的に能天気です。

この3年後(1989年・昭和64年)には昭和が終わり、日本社会は長い長い平成不況の時代へと突入しています。それ以降、明るくキラキラとしていたはずの日本は一度も輝きを取り戻すことなく、重苦しい時代が続くのはご存知の通りです。

1986年の文化、社会の流行をざっと見ていきましょう。

テレビ界では、バラエティ番組「夕やけニャンニャン」(1985年〜1987年)から派生したアイドルグループ「おニャン子クラブ」(1985年〜1987年)がこの頃に全盛期を迎えています。同じ昭和でも松田聖子や中森明菜、近藤真彦らソロアイドルが大活躍した1980年代前半からは少し風向きが変わり、現在にも通じる大人数型グループアイドルのスタイルが確立された時期でもあります。

※ドラマ「不適切にもほどがある!」では、1986年の世界に「マッチ」こと近藤真彦を真似たとしか思えない「ムッチ先輩」(磯村勇斗)が登場。近藤真彦は1980年に「スニーカーぶる〜す」で歌手デビューし、1980年代中盤にかけて全盛期を迎えています。レコード大賞を受賞したマッチの名曲「愚か者」は1987年の発売です。

上野動物園ではジャイアントパンダのトントンが誕生し、ゲーム界では伝説のRPG「ドラゴンクエスト」の第1作が発売。野球界では阪神のランディ・バースが2年連続三冠王の大活躍をするなど明るい話題も多かった1986年ですが、東京・中野では教師も参加する「葬式ごっこ」が行われた「中野富士見中学いじめ自殺事件」も発生。バブル景気に浮かれ上がる世相の中で、どこか社会が狂い始めたかのような出来事も起きています。

ドラマ「不適切にもほどがある!」では、昭和な喫茶&バー「すきゃんだる」の店内に「インベーダーゲーム」「熱血硬派くにおくん」などのテーブルアーケードゲーム、ピンクの電話、和式トイレ、ラジカセなどが登場。また、市郎のヤンキー娘・純子(河合優実)らが少し流行遅れになりつつあった「聖子ちゃんカット」を愛用するなど、1980年代の流行の数々が描かれていきます。

※本ドラマ脚本担当の宮藤官九郎(クドカン)による名作朝ドラ「あまちゃん」では、ヒロインの母・天野春子(小泉今日子)がアイドルを目指して北三陸から上京した1984年(昭和59年)が描かれています。劇中では昭和当時のアイドル文化などが上手く描かれており、「不適切にもほどがある!」でも宮藤官九郎お得意の小ネタ、昭和あるあるネタが多数登場しそうです。

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コンプラゼロの昭和 vs コンプラだらけの令和

「不適切にもほどがある!」主演の阿部サダヲと脚本の宮藤官九郎は、ともに1970年生まれの53歳。二人にとって1986年はまさに青春真っ只中の時代でした(当時18歳前後)。

脚本を担当する宮藤官九郎は、令和現在の厳しいコンプライアンスで自由な脚本執筆に制限が出ている部分もあるようで、「昭和を舞台にすればハチャメチャに書いても怒られない!」という逆転の発想が、このドラマのベースにあるようです。

本ドラマでは昭和すぎるパワハラ男・小川市郎が令和の世界に投げ込まれたことで、令和という時代の輪郭が浮き彫りになっていきます。

その一方で、逆に令和から昭和へとタイムスリップしてしまう社会学者の向坂サカエ(吉田羊)とその息子・向坂キヨシ(坂元愛登)の存在も面白いものになりそうです。

向坂サカエは性差別やジェンダー問題を社会に問い続ける令和気鋭のフェミニズム学者という設定であり、そんなサカエが市郎のような昭和男だらけの1986年に放り込まれればどうなるか、大体想像がつきますよね。

タイムスリップものは使い古された手法ではありますが、昭和と令和の時代ギャップ・ジェンダーギャップをコミカルに描いていこうという本作は新しい試みであり、宮藤官九郎の手腕が期待されます。

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