2014年9月20日(土)放送のNHK連続テレビ小説「花子とアン」より。
この日の放送では、花子(吉高由里子)がGHQの上官から「ポーシャのようだ」と称賛されていますが、これはシェイクスピアの喜劇「ベニスの商人」が元ネタとなっています。
GHQ軍人に英語で抗議
5年ぶりにラジオ放送に復帰した花子。かつて情報を統制していた「情報局」に代わり、戦後は進駐軍が原稿を検閲し、情報をコントロールしています。
放送の直前、花子に原稿を渡した進駐軍のアメリカ軍人が高圧的な態度を見せます。JOAK職員の一人が父の形見として大切にしている「万年筆」を、ジャイアンの如く取りあげてしまうのです。
困惑するJOAK職員を見た花子は、英語で抗議をします。それに対し、「チビのくせに英語が使えるのか、ママさん」とこれまた高圧的に返答をする軍人。そこへ軍人の上官が現われ、花子に対して謝罪をするように命じます。
謝罪が済むと、上官は英語で毅然と抗議をした花子に対し、こんな例えを用いて賞賛します。
「あなたはまるでポーシャのようだ」
「ポーシャ」はシェイクスピア「ベニスの商人」の才女
「ポーシャ」とは、シェイクスピアの喜劇「ベニスの商人」に登場する才女。美貌の貴婦人でありながら、法学博士の称号を持ちます。
ポーシャは、結婚を約束したパサーニオが悪質な金貸しシャイロックによって窮地に陥れられると、自ら若い法学者に男装し法廷に立ちます。ポーシャは機知に富んだ判決を繰り出し、悪徳の商人・シャイロックに見事打ち勝ち、無事パサーニオと幸せな結婚を果たします。
▼映画「ヴェニスの商人」。美しい女相続人「ポーシャ」(リン・コリンズ)が大活躍。この映画、見応えがあって面白かったです。
村岡花子と「ポーシャ」 軍事裁判で英語で弁じた
実在した村岡花子は、戦後の混乱期に「ポーシャ」のような大立ち回りを演じています。
花子が長年親しくしていた夫婦が闇市で儲けていることを何者かに密告され、その家宅捜索の際に「装飾用の短剣」(孫の初節句のために持っていた)の所持が発覚。
これが問題視され(当時「武器の所持」は厳禁だった)夫はGHQによる軍事裁判にかけられるのですが、その裁判が英語で執り行われるという難儀なもの。夫婦は頼れる弁護士もなく困り果てた挙句、英語が話せる花子に法廷に立ってもらうよう頼み込みます。
この頼みを受けた花子は、法廷で「機知」と「論理」を用いて英語で弁じ、見事に情状酌量を勝ち取ったのです。
裁判後、裁判長はおどけた表情で「あなたはまるでポーシャみたいだ。ポーシャを知っているか」と花子に声をかけ、この誇り高き、毅然とした日本女性を賞賛したのです。
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