NHK連続テレビ小説「マッサン」では、本場スコットランドのウイスキー「スコッチ」を理想とするマッサン(玉山鉄二)と、日本人向けに「ピート香」の少ないウイスキーづくりを指向する鴨居欣次郎(堤真一)がしばしば衝突します。
この記事では、ウイスキーづくりに欠かせない「ピート」とはどのようなものかを簡単にまとめます。
ピートって何?
「ピート(Peat)」とは、湿原に植物の遺骸が分解されず蓄積された可燃性の「泥炭」、「草炭」のこと。シダやコケ類、灌木、ヘザー(Heather、エリカ科の低木)などが堆積してつくられます(約千年で15cm堆積というスローペースらしい!)。
▲切り出された「ピート(泥炭)」。不純物が多い炭といった感じ。
画像はWikipediaから転載。
個性を決定付けるスモーキーフレーバー
ウイスキーをつくる際、麦芽を乾燥させる燃料としてピートが使われ、その際に発生する煙がウイスキーに独特の香りをつけます。これが「ピート香」と呼ばれるもので、蒸溜所によってそれぞれ煙の香りが異なります。※現在では多くの蒸溜所で、ピートは燃料としてではなく香り付けのために使用されています。
日本人には単に「煙臭い」?
まだ日本人がウイスキーに馴染みがなかった時代、ピートの香りは日本人にとって「煙臭さ」として認識され、ウイスキーが敬遠される原因にもなっていました。鴨居欣次郎は経営者としての嗅覚からこうした日本人の嗜好を捉え、日本人に合った「煙臭くない」ウイスキーをつくり出そうとしていたのです。
一方、マッサンはスコットランドで本場の「スコッチ」を学んで来た身。スモーキーなウイスキーこそが本物だという信念を持ち、日本人にもピート香が薫るウイスキーが受け入れられると信じています。
国産初のウイスキー「白札サントリー」も焦げ臭かった
ドラマ「マッサン」では、12月放送分あたりからマッサンが鴨居商店で働き始め、日本で初のウイスキーづくりに挑みます。
史実によれば、竹鶴政孝(マッサン)は鳥井信治郎(鴨居欣次郎モデル)が設立した寿屋(鴨居商店モデル、後のサントリー)に入社後、国産第一号の蒸溜所「山崎蒸溜所」の建設に尽力します。
この山崎蒸溜所で完成させた国産第一号ウイスキー「白札サントリー」は、寿屋が満を持して世に送り出したのですが「煙臭い」「焦げ臭い」との声が目立ち、さっぱり売れませんでした。
この当時から竹鶴はスコッチの風味の正統性を主張し続け、鳥井は日本人に合うウイスキーをつくりたいと考えていました。二人がやがて決別するに至る火種がすでに燻っていたのです。
ピートに恵まれた北海道の地
ピートは「寒冷地」「湿原」といった特定の気候条件の元に生成されます。後年、鳥井と決別した竹鶴が北海道・余市の地を次なる夢の舞台に選んだのも、北海道に多くのピートが存在したことが大きな理由です。
ピート香が芳醇に薫るウイスキーづくりを求めていた竹鶴にとって、スコットランドに似た北海道は、理想の大地だったのです。
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