NHK連続テレビ小説「なつぞら」9月5日放送(第136回)では、亡くなった天陽が生前に描いた「雪月の包装紙」が登場しています。
このエピソード自体はドラマ上のフィクションとなりますが、北海道の自然をデザインに取り込んだ六花亭の「花柄包装紙」とどこか重なるところがあるように思えますので、そのあたりの経緯をまとめます。
天陽作「雪月の包装紙」 なつがモデルに
9月5日の放送では、雪之助の依頼により生前の天陽が描いた新しい「雪月の包装紙」が登場。北海道の草原に佇む少女を描いたその包装紙を見たなつは、思わず涙を流します。
天陽は、開拓者精神を受け継ぐ(なつのような)たくましい人と出会える北海道、そんな北の大地で出会う人の素晴らしさを雪月のお菓子にも込めて、包装紙をデザインしたとのこと。
天陽のモデルとされる北海道に生きた画家・神田日勝が、雪月のモデルと噂される「六花亭」あるいは「柳月」の包装紙をデザインしたという事実はありません。
そもそも神田日勝と、なつのモデルとされる奥山玲子(仙台生まれ)との初恋物語自体がドラマ上のフィクションとなりますので、この「雪月の包装紙」のエピソードも基本的にはフィクションと考えていいでしょう。
・【なつぞら】「雪月」は「六花亭」「柳月」がモデルか 北海道を代表する製菓メーカーに
▼神田日勝が生涯最後に描いた未完の作品「馬(絶筆・未完)」の馬をモチーフにした柳月のクッキー。
「六花亭の花柄包装紙」 反骨の農民画家・坂本直行がデザイン
以上の前提の上で。
今も六花亭の象徴として愛されている「花柄包装紙」が、どこか「雪月の包装紙」と重なる部分があるように思えますので、簡単にまとめておきます。
六花亭の「花柄包装紙」は、北海道の自然画家・坂本直行(坂本龍馬を祖父の叔父に持つ坂本家の末裔)が手掛けています。
包装紙には北海道を代表する山野草、花が散りばめられており、北海道の豊かな自然を思い起こさせるものとなっています。北海道の自然風景を描いた天陽作・雪月の包装紙とどこか重なるように思います。
※「柳月」の包装紙はTwitter上で「柳月 包装紙」で検索すると、ちらほら画像が出てきます。個人の方のアカウントなのでこちらには画像の転載はしませんが、柳と月(?)を基調としたシンプルなデザインとなっていますね。
六花亭の「花柄包装紙」が誕生したのは、1961年(昭和36年)のこと。「なつぞら」劇中で「雪月の包装紙」が誕生したのが1973年(昭和48年)ですので、時代は少し違いますね。
1958年(昭和33年)、坂本直行は帯広千秋庵(現・六花亭)の社長・小田豊四郎から児童雑誌の表紙絵の依頼を無償で引き受けると、その後、六花亭の「花柄包装紙」のデザインも小田豊四郎から依頼されています。
「反骨の農民画家」坂本直行
坂本直行(さかもとなおゆき、ちょっこう)は1906年(明治39年)北海道釧路市生まれ。直行の祖父・坂本直寛は明治時代の自由民権運動家であり、高知から北海道に移住した開拓者。祖父・直寛はあの坂本龍馬の甥っ子(龍馬の長姉・千鶴の次男)でもあり、その孫の坂本直行も坂本家の末裔として、郷士坂本家八代当主となっています。
坂本直行は北海道帝国大学で農学を学んだ後に、十勝・広尾に移り牧場経営に着手しています。この頃から北海道の自然をモチーフにした風景画や植物画を描き始め、「反骨の農民画家」として活動をしています(後に札幌に移り住み、画業に専念)。
▼十勝の六つの花(エゾリンドウ、ハマナシ、オオバナノエンレイソウ、カタクリ、エゾリュウキンカ、シラネアオイ)をイメージした六花亭の「十勝六花」。
▼1992年に六花亭により開設された「坂本直行記念館」(中札内村)は、その後同村の「六花の森」内に移転。十勝六花や十勝の山々をテーマにした作品などが展示されています。また、同じく「六花の森」内にある「花柄包装紙館」には、坂本直行による六花亭の花柄包装紙の壁画が展示されています。